第29話 ディアボロ討伐①
作戦会議が終わり、いよいよディアボロとの接敵が間近に迫る。
「エリア28を更に前進…後30分もしないでエリア29まで到達します。」
グレースから戦闘員全員に無線が入る。
情報の伝達のため、各戦闘員にはマイクとイヤホンが与えられた。
これらはミズナが近くの電気屋にあった壊れた商品を即興で直して使えるようにしたものなので綺麗には聞こえないが、コミュニケーションのツールとしては十分に機能した。
「了解した。各員戦闘配置につけ。A班、B班、仕掛けはどうなっている?」
「こちらA班、仕掛けは終わりました。」
「B班だ、こちらも終わっている。」
個々の能力を判別している時間は無かったので、普段から一緒にいて、連携の取りやすいそうな人材をチームでまとめた。
A班は第六区の精鋭七人、B班はミカヅチの率いるブラストライト家護衛隊七人。
両班とも、仕掛けを作動する役目と、建物の中からディアボロを削る役目を負っている。
C班はマリー、マグワイア、ノア、グラシリア、ウィンストンの五人、D班は第六区組から五人で、両班とも回り込んでの後方からの遊撃隊。
E班の五人とF班の四人はいずれも第六区からの戦闘員で構成され、F班はマニーシャ、バシリスク、ウールの三人で、これらは真正面から対峙する班だ。
作戦としては、A班とB班がビルを縦横無尽に駆け巡りながら神出鬼没な攻撃を行う。
前と後ろから足元を削り、常にバランスを崩しながら、徐々に削っていく作戦だ。
しかし、それではこの大きさのディアボロを削り切るのに爆薬が足りない。
それゆえ……
「いいか、もう一度言うぞ。生物である限り、核なのか心臓なのか分からないが、急所があるはずだ。そして嫌がるところは無意識にでも庇おうとする。ボクシングで頭をガードするようにな。一斉に打って、先ずはその場所を確認する。各自、よく観察するようにしてくれ。」
(消化器官があるなら、内臓はあるはずだ……そうでなくとも、これほどの身体に意思を与えている脳のような器官が…表に出ていないだけで…頼む、深すぎないでくれ…)
ウールも、一か八かの賭けには、神頼みをするしかなかった。
「ええっと、マニーシャさん、でしたよね。戦闘員での女は三人しかいませんが、頑張りましょう!」
マリーが出かける前に声をかけると、マニーシャはニコリともせずに、「えぇ…もちろん。」とマリーを見ることもなく、そっけなく答えた。
(なんか、やっぱりこの人たちって普通じゃないわよね〜。)
マリーたちは苦笑いをして場を離れた。
「近づいてきています!約15分で到着!」
「グレースよ、言われなくても、もう見え始めているぞ…なんて事だ…あんなのに勝てるのか?」
ノアはその迫力に圧倒されてしまっていた。
大津波にのまれる時、このような気持ちになるのだろうか…
「気圧されるな。俺たちは粛々と作戦を遂行していけばいい。全員、肉体強化剤を飲め!」
ウールが呼びかけ、皆が肉体強化剤を飲む。
「うぅ、うわ、な、なんだこれ!?」
「うぐぐぐう…」
「あ、あわわ…」
数分も経つと、身体がビリビリし始めて、とんでもないほど力が沸いているような感覚になる。しかも、感覚が鋭敏になって、視界も聴覚も、全てが鋭くなったように感じる。
「落ち着け、そして呑まれるな。脳が大量の情報伝達物質の往来に順応しようとして、一時的に超感覚を体験しているだけだ。現段階でも身体能力が何倍も向上したはずだ。興奮状態を抑えて、冷静になるんだ。すぐに慣れる。」
皆が各々に落ち着きを取り戻し始めていた頃には、ディアブロはすでにとてつもないスケールと迫力で眼前まで迫ってきていた。
横の端は霞んで見える。
背丈も、もはや超高層ビルのような高さだ。
(一体どれほどの人間を食べてきたのよ!)
後方に回るために一足先にディアブロを迂回しようと大きく回っていた遊撃隊のマリーは憤慨した。
⭐︎⭐︎⭐︎
F班のウールたちの後ろ、数キロ先にはコミュニティの人間たちがいて、これらの人間が囮になっている。
ウールは大砲を構えた。バシリスクが火をつけるためにスタンバイする。
「よし、所定の位置に来たぞ。一斉に行くぞ。5、4、3、2…」
カウントダウン終了の間際、ディアボロが細長い棒のような触手を一直線に伸ばして、大砲を構えているウールに襲いかかる。
「うおっ!!」
「あら!!」
ウールとバシリスクが同時に飛び跳ねて避ける。
肉体強化剤を使っていなかったら串刺しになっていただろう。
マニーシャが即座に触手を一刀両断する。
幸い大砲は傷つかなかった。
「野郎!ワン!ファイヤ!!」
すぐに持ち直し、バシリスクが大砲に火をつける。
(俺の攻撃の意思を読み取ったのか!?)
ウールの思考と同時にA班、B班が、起爆装置を押して、地面に仕掛けてあった爆弾が起爆する。
突然の足元での爆発に、ディアボロは焦ってあちこちに棘を放出する。
(狙い通り!焦ったな!?これでとっさにどこかを庇うはず!?)
地面の起爆から一瞬遅れて、正面からは大砲、背面からはバズーカ砲、そしてディアボロよりもさらに高いビルの位置から手榴弾が投げ込まれ、同時にナパーム弾がディアボロの左右で火を吹いた。
刹那、ビルから投げ込まれたある手榴弾に対して、それを払い除けようと多くの触手を出した瞬間が見受けられた。
「「あそこだ!!」」
B班(ミカヅチ組)とF班(ウール組)から見える位置に、確かにそれは見えた。
しかし、ほぼほぼ上の方で、地面からだと届かないかもしれない。
「急所はディアボロ上部、てっぺんから20mほどの位置。B班ビルからの距離50m!」
「「了解!!」」
ウールは大砲の軌道修正し、狙いを定める。
「一斉に行くぞ!全方向から狙え!」
「地面からだと、バズーカ砲は届かないぞ!?」
バズーカ砲を構えるマグワイアが口早く喋る。
「脅かすだけで十分だ!撃ってくれ。」
「ラジャーだ!」
その瞬間にディアボロは多くの棘を出し、B班に集中攻撃を浴びせ始めた。
ディアボロにとっては最も脅威となる位置にいるのがB班ということだろう。
「グハァ!」
「ジャック!?大丈夫か!?」
ミカヅチの部下のジャックが串刺しにされて、ディアボロに一瞬で吸収される。
「クソ!!」
「落ち着け!!一斉に行くぞ!3、2、1、ファイヤ!」
先ほどにもまして激しい銃火器の数々がディアボロに打ち込まれる。
凄まじい爆発音と共に、ディアボロの急所と思われた部分が大きく欠けた。
「よし!!やったか!!?」
期待したのも束の間、その数秒後に、棘の嵐が全班を襲う。
そして、徐々に欠けた部分を補うように、ディアボロの身体が再生されていく。
「おい、あそこが急所じゃなかったのかよ!?」
ミカヅチが叫ぶ。
「………わ、分からん。とりあえず、避けろ!」
触手は縦横無尽に駆け巡り、1人また1人と戦闘員を削っていく。
ウールは思考したが、先ほどのように一斉射撃をしても、確実性がないのならば無駄に弾薬を浪費してしまう可能性がある。
「旦那!これじゃあ埒が明かないよ!」
マニーシャは、触手を切り刻みながら忙しく動いている。いくら肉体強化しているとはいえ、皆の体力にも限界は来る。
ウールはディアボロを削り切ることも一瞬考えたが、削り切る前に確実に弾薬は尽き、高周波刀だけでは削り切る前に体力が尽きるだろう。
それほどのスケールであった。
元々はそれゆえの急所一点に集中攻撃を加える作戦だったが、もはやどこが急所なのか分からなくなってしまった今、策がない。
(退却…いや、そうすれば、奴はもう手が付けられなくなる。万事休す…か。)
徐々に弾薬も、体力も底が尽きてくる。
徐々に場が絶望に支配されそうになっている時、無線に声が入る。
「皆さん、聞いてください!急所だと思われる場所が分かりました!!」
声の主は、グレースだった。
第30話「ディアボロ討伐②」へと続く。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます