第20話 呼び出しをくらう
オムニ・ジェネシスがハルモニアの大地の降り立ってから、実に2ヶ月もの月日が経った。
キュリー、ミジー、モリーマ以外でも、様々な動物が訪れるようになる。
-身体中にキノコが生えているトラのような生物、キーノ (ドクター・ムニエル命名。キノコは毒だが肉は絶品。)
-頭部が株のように白く丸くて、脚が無数に生えていて枝のようになっている生物、カーブ (ドクター・ムニエル命名。脚は食えるが、栄養価はほぼ皆無。)
-体調は50cmぐらいしかないのに、驚かせると孔雀のようにカラフルな羽を広げ (その広さ、半径5mほどの半円) 敵をビビらせる怪鳥、ジャーク(ドクター・ムニエル命名。完全食と思われる。肉も美味い。)
この他にも、未確認生物の報告が上がっている。
調査の結果、約1m〜1.5mほどの穴がちょこちょこと空いていて、そこから入り込んでいるらしかった。
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軍は急速に拡大し、オムニ・ジェネシスでは、武装化された人々がゾロゾロとグループになって行動する様子が伺えた。
ただし、軍とはいえ、即席で作られた一般人の武装集団である。
アナウンスからの情報により、動物たちの生態を理解し、食糧の調達において現地の食材に頼るしかないと分かってからは、人々は武器を手にし、各区においてベースを作り、狩りと防衛に励むようになった。
もっとも、銃や刀などは限りがあり、武器が圧倒的に不足していたため、多くは鉄パイプや包丁などを手にしてついていっているだけであった。
戦闘ともなると、それまで意気揚々と歩いていた者も逃げ出したりするのが目立った。当然のことだ。つい昨日までは武器なんぞ持ったこともない連中だ。
化け物がいると聞かされて、生きた心地のしないまま歩かされて、戦わされているいるといったところだ。命をかけて戦うなど、想像もしたこともない。
まるでフィクションの世界へと入り込んでしまったような心境であった。
比較的冷静そうに見える連中は、大抵過去に命をかけたような戦闘の経験があるか、脳内で現実逃避という贅沢にあずかれている人々である。
ビリー将軍とて実戦など、100年以上ご無沙汰だ。
今この状況で勇猛さを失わない彼を突き動かしているのは、軍人という自負と責任と、数々の栄冠を支えてきた擬似戦闘に対するプライドである。
しかし、こうして戦う人が増えると、新たな狩場を求めてコズモらのいるコミュニティから抜ける連中も多く、管理が難しくなっていて、コズモらも抜けた連中がどうしているのか、イマイチ把握できていなかった。
オムニ・ジェネシスが一丸となって強固な軍を編成するという計画は頓挫し、コズモらも今現在で得られる食料には余裕がないため、外に出るか、生物が入って来れる穴を拡大するかで議論が交わされていた。
そして、切迫してきた食糧難は、新たな悲劇を生んでいた。
弱者差別である。
グループの弱体化を恐れ身体が弱そうな人間を除外することが各グループで流行り始め、弱きものが抵抗すると、暴行を受け、捨てられた。
特に女性や身体が細かったり小さかったりする人が除外のターゲットにされた。
時に、弱きものが包丁でグサリと強きものを刺して殺すと、こいつは使えるという風に納得されてグループで権力を持つ、なんてこともあったりした。
化け物退治とは関係のない場所で人々は死んでいった。
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「やはり、生物が侵入しやすい経路を拡大しリスクを負うよりも、小隊を組んで一度外に出てみて、どのようになっているのか確認するべきですな。」
ビリー将軍が進言する。
「様子を見るだけならドローンで十分だわ。黒豹くんらのサイクリングのお陰で、バッテリーは何度でも充電できるし。」
ミズナは、サイクリングで充電が可能なバッテリーを作り、それをドローンに組み込めるように改造した。
「…うむ、先ずはドローンを出すことに異論はない。そして、未だにゾアンとの接点はないが、いつまでも見つからないとタカを括るわけもいかないだろう…」
コズモはずっと、ゾアンが今や攻めて来るのではないかと心配していた。
「…ええ、私たちも同意見です。この霧のせいで見つかっていないのだとは思うのですが…やはり、早急にグレースに戻ってきてもらった方が良いのでは。」
ステラは、それだけでなくグレース本人が大丈夫なのかと心配もしていた。
「彼女には、何度も使いを出していて、第四区のコミュニティにいる事は確認できているのですが、どうも毎回断られてしまっている状況です。」
「信用ないね〜、リトル・チーキーの皆さん。」
ミズナの軽口に少しムッとなったビリー将軍が口を尖らせる。
「我々は、我々で最善を尽くした。ただ、彼女のフィロソフィーと合わなかった、というだけです。」
「うーん、じゃあ、彼女の事を研究して、彼女がいなくてもゾアンとコミュケーション取れるようにするにが一番じゃない?」
「そんな、絵空事、無理に決まっておろう。」
ビリー将軍は首を横に振る。
「そうかしら?彼女の彼氏だけど、彼女の特殊能力は、脳波にあると見込んで研究していたらしいけど、一定の成果をあげてたっぽいわよ。詳しいところまでは知らないけど。完成させた脳波計を向こうに持っていけば、研究できるわ。」
「待て、そうなると、貴方は向こうに行くことになるが…?」
「そういう事ですね。私はバイクを持っているので、ここへだってすぐに来ることできるし。船長、どうでしょう?」
「…名案だとは思うが、あなたは優秀な発明家であり、エンジニアだ。すでに水の浄化システム、いくつかの主要武器、顕微鏡などを修理してくれている。そんな貴方にリスクを負わせるわけにいかない。行くならば、護衛をつけてくれ。それが条件だ。」
「はーい、そうしてくれると私もありがたいです。正直なところ、材料とパーツと燃料か電力があれば、もっと色々な事が出来るんですけどね〜。流石にこの状況じゃ、ほとんど手付かずなのよ…あ、あと、こちらからも条件があります。」
コズモは、行ってみなさい、というジェスチャーをする。
「助手として、スタンプ・モンチャン連れて行きますね?いいですか?グラシリアさん。」
グラシリアがブッと吹き出す。
「ス、スタンプが助手ですか!?彼女にとっては栄誉極まりない事です。どうぞどうぞ、という感じですが、あの子、他人の言う事まったく聞かないですよ。」
「でも、あなたの言う事なら聞きますよね?じゃあ、管理役として、貴方もついてきてください。」
「あぁぁ〜、そんな単純な話では…いや、わ、分かりました。必ず彼女を貴方のお役に立てられるようにしましょう。」
自らの癒しスペースを完備し、ゴロゴロと転がっていたスタンプがクシャミをした。
「え、マジ…風邪ひいたらマジだるいし…」
スタンプはそのすぐ後で呼び出しをくらった。
第21話「役立たずはいらない」へと続く
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