第17話 軍隊発足

ビリー将軍とヒュンサブ副将軍の目前には、150人の部隊が10x15の列を組んで並んで立っていた。


各々が霧対策用ゴーグルを装着しており、何らかの武器を持っている。


この日は、ビリー将軍の「武器講習会」の日である。

数週間かけて、ようやく一つの軍隊らしい最低限の人数と武器を確保することに成功した。


「よくぞ来てくれた。このように軍部を復活させることが出来たことは、防衛の意味で大きな前進をすることができたと言えよう。」


ビリー将軍は少し高い場所に立って、この軍隊の様子を俯瞰しながら喋り始める。


「まだ150人という小さい組織ではあるが、武器の確保が出来次第、数を増やしていくことになると考える。そして、ここにいる150人は現在このコミュニティの、あるいは人類そのものの命運を握る部隊にもなりゆる。そのことを肝に銘じて今日はよく聞いていて欲しい。」


コズモやステラも、この講習会の様子を少し遠い場所から眺めている。


「先ずは、人数分ある高周波ナイフや刀の類だが…」


ビリー将軍は、先ずは小さなナイフを取り出す。


「このナイフには、先ず安全装置が付いていて、カバーを外した後、このスイッチを切り替えて……この取手部分のボタンを押しながら……」


ビリー将軍の説明を聞きながら、ヒュンサブ副将軍は目を開けながら眠りの世界へと旅立つ。


「続いて、刀の方がだが、これはまた安全装置が……そして、今度はここにこのスイッチが……刀を左右に振って……では、威力をお見せしよう。」


ヒュンサブ副将軍は、特殊能力によりビリー将軍が彼を必要とする瞬間の時だけ目を覚ます。


すぐに予め用意してあったテーブルの上に鉄製のボックスを置く。


ビリー将軍は、大きく振りかぶり、テーブルごと鉄製のボックスを一刀両断する。

観衆からは、おお、っという声が聞こえる。


「……ご覧の通りだ。銃が効かない場合でも、これならばダメージを与えられる可能性が十分にある。ただし、中途半端な切り方だと、安全機能が働いて切っている途中で高周波が止まって抜けなくなるかもしれんので、注意するように。」


ヒュンサブ副将軍がテーブルを片付けてる最中にも、ビリー将軍の講習は続く。


「続いて、銃だが、ご存知の通り、精密機械を有する武器は故障中で、重要パーツが焼き切れてしまったため、材料も補充できず、旧時代の弾丸をベースにした武器しかないわけだが、こちらは…」


また説明が始まり、ヒュンサブ副将軍は、今度はビリー将軍の試し撃ちの時に目覚めるのであった。


「……ご覧の通り、大きな銃だと特に反動が強い。尚、弾には限りがあるため、実弾による訓練はやらないものとする。その代わり、ナイフや刀を使った近接戦闘技術を中心に訓練を構成する、そこでだ……」


ビリー将軍の目は、前列の真ん中にいる女性と、その隣の男に向かった。


「第六小隊隊長、フーコ・ミラージェ殿。及び、第七小隊隊長、マグワイア・ガンボ殿の両氏に近接格闘技訓練の師範となってもらい、本日より訓練を開始するものとする!」


「「ハッ!!」」


フーコとマグワイアはこれに応じる。


「それともう一つ、投げ物の訓練も行う。今はドローン爆弾がこの系統では主流となっているが、こちらも壊れてしまっているため、この旧式グレネードを使用する。使い方は……」


そして、また予め用意されたグレネード試験用の部屋にグレネードを投げ込む。

この破壊力には皆んなが驚いていた。


「こちらは、同じ程度の重さの形だけ似せた金属の塊を使って訓練するものとする。」



⭐︎⭐︎⭐︎



武器講習会はフーコとマグワイアに引き継がれ、その後、実際に訓練が始まった。

ビリー将軍は途中まで監視していたが、やがてコズモのいる場所へと引き上げていった。


「なかなか素晴らしい講習会だったな。」


コズモがビリー将軍を労う。


「いや、まだ焼石に水の状態ですな。数百億いると言われたゾアンの総数、そして奴らの強さを考えると、一気に攻め込まれたら人類は半日と持たないでしょう。」


「ああ、そうだな…幸い、この霧のせいなのか、ゾアンたちには見つかっていないようだ。俺たちに出来ることは、抑止力を持ちながら、ゾアンに害を与えずそっとしておいてもらうようにすることだな。」


「今、こうして生きていること自体が奇跡…ですな。いずれは食料確保のために外にも出始めないといけないでしょう。」


「その食糧に関してだが、キュリーはタンパク質の塊で、人間が食べても恐らく害はない、というのが、ドクタームニエルの見解だ。すでに試験中だ。」


「試験中?とは?誰かが毒味をしているとでも?」


「間接的にそうとも言えるな。ただ、いきなり食べさせて死んでしまっても困るので、先ずは十分に火を通し、皮膚に触れさせ、それからしばらく待つ。強い毒気があるなら、ハルモニアスーツが変色するはずだ。それから舌にちょっとだけつける。それでしばらくして舌が痺れたりしなければ、今度は細切りにしたもの、ほんの数グラムほどを口にして、消化を待つ…といったような手順だ。今は、少しづつ食べる量を増やしているのと、別々の部位で同じことを試している段階だ。」


「なるほど、だから『試験中』ですか。」


「ああ、しかも、驚くほど多くのボランティアを得ることができた。」


「ふん、これも貴方の人望の成せる技ですよ。本当にキュリーが食べられるならば、定期的に狩りに出ることも考えなくてはいけませんな。」


「ああ、だから、軍を鍛え上げたら、軍には先発隊として外へ出て来て欲しい。」


「ご命令とあらば、従うのが軍人です。」


「ああ、すまない…外へ出れば、ゾアンと出くわす危険も増すだろう。くれぐれも注意してくれ。」


事の顛末を聞いていたステラがここで口を挟む。


「ゾアンと言えば、グレースはどこへ行ったのかしら…彼女の協力を得られれば、仮にゾアンと接触しても、もしかしたら交渉ができるかもしれません……」


「グレース・ブラストライトか…あの若いお嬢さんには申し訳ないことをしたな。戦争の熱に浮かれて、我々は彼女の気持ちを踏み躙ってしまった。彼女の目からすれば我々は戦争狂のように映っているかもしれないな。果たして協力するために戻ってきてくれるのかどうか…」


「恐らくですが、彼女はブラストライト家に戻ったのではないでしょうか。」


「……かもしれんな。少し軍に余裕ができたら、使者を出すことにするか。」


コズモはそう言うと、キュリー食試験に参加してる人々の労いへと向かった。





第18話「家族との再会」へと続く

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