第13話 二百年前の惨劇
オムニ・ジェネシスで『ゾアン』と名付けられた生物は、ハルモニアの食物連鎖の頂点にいると思われる。
ゾアンには、誰しもが知る歴史的文献が存在する。
オムニ・ジェネシスがハルモニアに到着する約二百年も前の文献だという。
そしてその一部は抜粋され、永久石板にも刻まれている。
内容はザッとこんな感じだ。
【やつらは突然やってきた。あの悪魔どもはこの星を侵略せんと、我々に
は想像すらも及ばない兵器によって惑星を蹂躙しようとした。我々がなにを
したというのだ?一切の慈悲もなく、あの悪魔共はただただ我々から奪った。
やつらがターゲットにした集落は業火の元に消滅した。親愛なるペリクス(ゾアン)の民よ。この惑星を愛する同士たちよ。今こそ集落同士の争いをやめようではない
か。この惑星に生きる全ての民が一丸となることでしか、この悪魔を排斥することはできないのだ。あの悪魔どもは我々よりも進んだ技術と残虐性を持って我らを全滅しようとしている。現に多くの集落がこの地上からすでに消え去った。我々がバラバラになっていては絶対に勝てない。これは、この惑星に住む全てのペリクスたちの生存戦争なのだ!みな、武器をとれ!戦って、生き残るのだ!勝利せよ!勝利せよ!】
文献の続きでは、それから二十年かけていかに勇敢に全てのゾアンたちが一丸となってこの悪魔どもに戦いを挑み、そして最後には皆の願いが聞きいられて、プリヤーナが現れ神の鉄槌が下されて戦いに決着がついたことが書かれている。
そして、悪魔どもはプリヤーナに連れ去られ、裁きを受けたのだっと。
プリヤーナも、その時に悪魔どもと一緒に去っていったらしい。
ブラックワームはこのプリヤーナが残した贈り物で、またどこかで侵入者が現れた時に戦えるように残されたものであったようだ。
当時、二十年にも及ぶ戦いで、ゾアンの個体数の七割が消滅してしまった。
このような存亡の危機であったがために、二百年経った今でも強烈な伝承として残っているのだった。
この歴史的快挙に伴い、ゾアンの民同士は協力しあうことを覚え、集落間での
争いもなくなり、その後、かつてないほど戦争のない平和を獲得することにな
る。
個体数もベイビーブームで爆発的に増えることとなった。
だが、未来のどこかであの悪魔たちの仲間がやってくるかもしれない、という恐怖は根強く残っており、その時に備えるためにゾアンは惑星軍を組織し、ブラックワームを利用した宇宙監視局を設けたのだった。
そのような経緯で、ハルモニア中で急ピッチで軍備強化が行われた。とりわけ宇宙戦闘技術は、かつてないほどの成長を見せた。
侵略者との戦争が終結してから約二百年が過ぎた時には、ゾアンたちも完全に過去の文明レベルをはるかに凌駕して繁栄を見せていた。
ところがある日のこと…宇宙観測データに目を通していたハルモニア観測所のホークアイ局長は、宇宙空間に現れた点が何なのかをじっくり調べていた。新しい彗星かはたまた太陽系に紛れ込んだ新手の隕石か……そして、その点は徐々に大きくなり、数日が過ぎて、なんとかその姿形を捉えることに成功したわけだが、その姿を目視したホークアイ局長は全身の毛を逆立たせてその場で腰を抜かしてしまった。
まさに、あの悪魔と呼ばれた連中が乗ってきたものにソックリではないか!?
腰を抜かしたホークアイを手助けしようと手を貸しに行った助手のミポポンも、望遠鏡を覗いた瞬間に、目から光が消え失せた。
あの悪魔がまたも、ハルモニアへ迫らんとしていた……
オムニ・ジェネシスが惑星に近づくにつれ、ハルモニアは震撼した。
第14話「スペッツ隊の帰還」へと続く
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