第7話 復旧と課題

「……ああ、だからずっと1人で籠っていれば良かったんだ…部屋から出ないでパソコンだけ弄っていれば…」


元ストーカーで、コンピューターエンジニアのスタンプ・モンチャンがブツブツと呟きながら寝転がっている。


「貴方の心の声、ダダ漏れしちゃっているわよ、スタンプ。」


オムニジェネシス第一区の代表者グラシリア・バーンズが呆れたように言う。


「聞こえてもいいんす。私はどうせ、夢見る少女にはなれないんす…」


「何を訳のわからない事を…それに、なんですか、その格好は?」


「これですか? Pocchariの『ニンニン祭り』の時に使ったコスチュームっすよ。クノイチって言うんですけど…なんかぐちゃぐちゃになった部屋でこの服だけが完璧な状態で残ってたんすよ。運命っすねえ…クノイチに生まれれば良かったんす。」


「……どうでもいいけど、露出が多いコスチュームですこと。」


グラシリアは少し皮肉めいた口調で語尾を上げた。


「そう!そうなんすよ!頑張ったんすよ、自家製っすよ!それなのに、たっくんは見向きもしないで!クソォォォ!」


スタンプが手足をジタバタさせる。


グラシリアは奇妙な動物でも見るような視線を向ける。


(こ、この子、船の状況分かってないのかしら?これからサバイバルが始まるって時に、何でさっきからこんな会話ばかりを…?ホント、黙っていれば可愛くてモテそうなのに…って、え?私までこんな事を??)


グラシリアも自らの脳がバグってしまいそうだったので、それ以上は何も言わなかった。


不時着から目覚めた時、一番近くにいたスタンプとずっと一緒にいる。


スタンプは先ずリトル・チーキーを目指すべきだと言ったが、歩きだと数日かかる事を考慮してその案を却下した。


歩くのを面倒くさがったスタンプはこれに合意した。


グラシリアは、それよりも何かの下敷きになったりしてポッドから出れなくなったりしている人や怪我をした人を救うためにまず動いた。


安全な避難所を見つけ、地元の人たちを集めて救助隊を編成する。


更には、ゾアンやブラックワームなどの生物たちとは最悪戦闘になると考え、戦うための武器の調達を促し、その後でリトル・チーキーを目指すことにした。


幸い、今のところゾアンからの攻撃はない。不時着して数日経つが、恐ろしく静かだ。


「ブライアン、ただ今戻りました!」


武器確保の指揮を取っている軍隊出身のブライアンが勢いよく部屋に入ってくる。


スタンプはそんな事はお構いなしにうつ伏せになったままで身体をくねくねさせていた。


グラシリアはスタンプを見ないようにしてブライアンへ報告を促す。

ブライアンも、クノイチのミニスカからチラチラ覗く肉付きの良い太ももになるべく目が行かないように意識しながら辿々しい報告を始める。


「と、とりあえず、使えそうなものを集めてきました。幸い、武器工場は第一区に集まっているので、武器自体は手に入りましたが…」


「…が?」


「最新鋭の武器のほとんどは使い物になりません。対ゾアン用に開発していたものはオートエイムや自動追尾、そしてナノ式バッテリーを用いた充電式が多く、これら精密機械を使う類は全て故障しています。サブで近距離専用に製造された高周波ナイフやブレードなどはまだ使えるようです。後は、旧式の弾薬使用型の銃を数十艇、プライベートコレクターの家から押収できています。」


「…弾薬式ですと、銃弾が無くなるとお手上げですね。それに、圧倒的に数が足りないのと、弾丸程度の威力では、ゾアンたちと戦うにはいささか頼りないわ。やはり武器製造所を復旧させるしかないわね。」


ここまで言うと、グラシリアはゴロゴロと転がっているスタンプの方へ目を配る。


(コンピューターさえ動けばスタンプならばプログラムを復旧させることは可能だわ。設計書があれば、新しい武器を製造するためのプログラムも組めるかも。でも…)


グラシリアにジッと見られているのに気づいたスタンプが怪訝な顔をしてグラシリアを見返す。仰向けになって脚を組んで、今度はパンツがちょっと見えてしまう。


(ああ〜、もう!この子に頼るしかないなんて!運命って、本当に残酷!)


「……あの〜、今、すごく失礼な事を考えていませんでしたか?」


目を細めるスタンプから顔を逸らして、グラシリアはブライアンの方へ向き合う。


「武器の設計ができる人、誰かいる?武器の製造を復旧させなくてはいけないわ。」


「え、そ、それなら、ビリー将軍が一番だと思います…細かい機械の部分は分かりませんが、武器の構造に一番長けているのはビリー将軍です。」


「ビリー将軍。恐らくリトル・チーキーでコズモ船長らと合流しているのではないかしら。だとしたら、誰か使いを出して、ビリー将軍にヘルプを要請しないと…」


グラシリアの言葉は最後まで言い終わらない内に突然遮られた。


「助けてくれ〜〜〜!!軍隊〜〜!!」


息を切らしながら駆けつけてきたのは、救助隊の隊員マルクスであった。

このマルクスは、宇宙でのブラックワーム戦にて大活躍をした英雄であったが、戦闘機「カオスファイター」を使う機会が無くなった今ではただの運動不足のオタクに成り下がってしまった。


「どうしたの!?」


「ハァ、ハァ、ハァ、いや、なんか、変な生物が入り込んで来てます!サボテンみたいなやつと、ミジンコみたいな奴と、それからなんかすげえピョンピョン飛んでるマリモみたいなやつが…人を襲ってて!ヤバイっす!」


グラシリアとブライアンは顔を見合わせる。

流石のスタンプも興味を持ったのか、身体を起こす。


「と、とにかく、これらの武器が通用するのかを試さないと…」


いつかは何かに遭遇するとは覚悟していたが、突然の知らせにグラシリアは動揺を隠せない様子で武器を持ち上げる。


「は、はい、そうですね。すぐに部隊を現場に急行させます。わ、私も参ります。」


ブライアンも命をかけた未知との戦いなど初めてのことだ。言葉とは裏腹に腹の芯の部分は震えていたが、それを全身に力を入れて押さえ込んで、精一杯虚勢を張っていた。


「案内してくれるか?」


ブライアンにそう言われて、マルクスはウッと少し唸ったが、すぐに「はい!」と気持ちの良い返事をした。


早速ブライアンは寄せ集めの軍隊を集めて、武器を取り現場に向かおうとした。


「……待て!!」


突然大きな声がする。


「その生物ら、倒した後でもいい、サンプルを持ってきてはくれないかね。そして、もし出来るならば、生け捕りにできたらそのようにして持ってきてはくれないかね?」


スタンプのすぐ後ろには、ゾアン実験施設の最高責任者、ドクター・ムニエルが立っていた。




第8話「ブライアン部隊 VS 現地生物」へと続く

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