第4話 「君は女の子。良いね?」
ひとまず、濡れたままではマズイだろうと渡された白いセーラー服に着替える。
「ごめんね〜男物しか無くて」
なんて言われたが、むしろスカートから解放されて嬉しい限りだ。
更衣室に備え付けられた鏡で改めて確認する。
やはり
ウェーブを描く長い金髪と、青色の目。
真っ白すべすべの肌。
あまり見すぎるのも悪い気がして、急いで着替える。
本来の琉海なら与えられた服はジャストサイズだったのだろうが、手足が余ってしまった。
「あぁ……これからどうしよ。逃げる?」
説明しても信じてもらえるか分からないし、かと言って誤魔化すにしたって方法は分からない。
幸い、更衣室は一階に有るし、人が通れるほどの窓も有る。
「けど逃げた所でなぁ……」
いつあの
このブカブカの格好ではマトモに逃げるのも難しいだろう。
「素直に説明して、無理だったらその時考えよう」
うだうだ考えた所で、それよりも良い解決策は浮かびそうに無い。
知りたい事も多いし、きちんと話すしか無いだろう。
覚悟を決めて更衣室から外へと出た――
のが、二時間程前。
「どうしてこうなった?」
当面の生活拠点として使うように与えられた部屋だ。
「ん〜、指揮官様は大事にしなきゃだからね」
正面に座り、ニッコニコの笑顔で
ほんの二時間前は疑いの目を向けていたのに、この変わりようは何なのか。
きっかけはそう。
琉海がヤケクソで全て語った事。
――――――――――
『信じて貰えるか分からないんだけど、違う世界から来たというか……家に居たら突然家が海になって、溺れてる所を助けられた……んだよ』
――
正面には
下手くそにも程がある説明を聞いて、
当然だろう。信じ難い話なのだから。
二人は互いの顔と
そして
「あの時の! アレだ! 人手不足すぎて召喚の儀式やった時の!」
「あっ……! そうだ……そんな事有ったね? 三徹開けの
希洋の言葉にピンと来る物が有ったのか、
正直な所、絶対に信じてもらえないと思っていた琉海は面食らった。
そんなに簡単に信じてもらえる物なのだろうか……。
とはいえ、
「ごめんね〜君が持ってるそのペンダント、俺のとそっくりだったから盗まれたんだと思って……」
「あっそうなんだ……知らない内に盗ってたとかかな……返す?」
「あぁ、大丈夫。君が召喚された指揮官様なら、別物って事になるから」
「……そういう物なんだ?」
ダウンロード中にそんなような記述が無かったか思い返すが、特に心当たりは無い。
「ってか、信じてくれるの?」
「うん。疑ってたけど……まぁ、こんな嘘付く人普通居ないし」
「そうなんだ?」
「仮に嘘なら……まぁ、ここに捕まえてる限り大丈夫だし」
知らない事や分からない事、その他考えるべき事が多すぎて頭が痛む。
「まぁ、詳しい事は順を追って話すよ。今日は疲れたんじゃない? ゆっくり休みなよ」
そんな琉海の心情を見越してか、
「部屋は……
「えぇ……お前ホントに……まあいいや。
呆れたような……ゴミを見るような目で花威を見、希洋が部屋を出ていった。
希洋が去って行ったのを確認すると、
「……ね♡ 君の事もっと知りたいんだけど、名前教えてくれない?」
自然と琉海の手に手を重ねていて、女慣れしているのが伝わって来た。
「……」
(女子ってこういう急接近嫌がるもんじゃ無いの? イケメンだから許されてる感じ? 早く男だって言わなきゃ)
長いピンクの髪から、無駄に良い匂いがする。
妹が好きそうな匂い。つまり女子はこう言うのが好きなのかもしれない匂い。
「す、
重ねられた手を引き抜き、距離を取りつつ答えた。鼻の中に匂いが残っているみたいだ。
途端、
「おと……こ……」
ショックを受けたような顔でしばらく琉海を見ていた花威。
しかし彼はあろう事か、数回瞬きをしただけで持ち直した。
「今その体が女の子ならさ、それはもう女の子じゃん」
「違いますけど?」
(なんだコイツ怖)
「やだ。女の子。君は女の子。良いね?」
「ヤダ! 俺男!」
「やだ……僕が男の事を口説いたなんて事実は存在しない。お願い女の子になって」
「ヤダはこっちのセリフなんだけど!?」
――なんて事も有りつつ、掃除を終わらせた
「どうしてこうなった?」
恐らく、琉海の家のリビングよりも広い。
「ん〜、指揮官様は大事にしなきゃだからね」
希洋はニコニコ笑っているし、部屋は豪華だし、ベッドは天蓋の付いたお姫様仕様。
「これから俺どうなるの……」
頭を抱える琉海に、希洋はニコニコと笑っていた。
(とにかく今は家に帰る方法を探さないと)
琉海の目的は定まった。
……実現できるかは、まだ分からないが。
――――check point――――――
選ばれた者しかなる事はできず、救世主に選ばれた人は過酷な戦いに身を投じる事となる。
救世主による攻撃でなければ、例え核を使ったとしても魚神には傷一つ付けることができないのだから。
――――――――――――NEXT――
―――あとがき――――――――――
ここまで読んでいただきありがとうございます!
頑張って毎日投稿続けていきます。
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