第37話 「生きづらさ」の正体に気づく

「生きづらい」という言葉を、私は何度も自分に向けてきた。

人間関係に疲れ、周囲の期待に応えられず、自分自身がどうすればいいのかわからなくなるとき――そのたびに、心の中で「どうして私はこんなに生きづらいんだろう」とつぶやく。


その「生きづらさ」の正体が何なのか、私はずっと探していた。環境のせい? 自分の性格のせい? それともただ私が弱いから? 答えが見つからないまま、ただ焦りと疲れを抱えていた。


けれど、少しずつわかってきたことがある。「生きづらさ」は、私が自分を無理に他人や社会に合わせようとしすぎていたからだ。


たとえば、人と話すときのこと。「こう言えば相手は喜ぶかな」「こんなことを言ったら変に思われるかな」と考えすぎて、いつも自分の本音を押し殺してしまう。人といるのが疲れるのは、自分を偽り続けているからだと気づいた。


また、周囲の「普通」に合わせようとして苦しくなることもある。「大人ならこうあるべき」「これくらいのことはできて当然」という言葉に縛られ、できない自分を責め続けてしまう。けれど、その「普通」や「当たり前」は、必ずしも私にとっての正解ではないのだ。


「生きづらさ」の正体は、自分らしさと他人の期待の間にある「ズレ」なのだと思う。周りの価値観に合わせようとしすぎると、そのズレが広がり、自分の居場所がどこにもないような気がしてしまう。


だからこそ、私は「自分らしさ」を少しずつ取り戻すことにした。


無理に人と同じでいようとしなくていい。できないことがあっても、それは私の個性だと認める。人と違っていても、私にとって心地いい選択をする――それが「生きづらさ」を軽くする方法なのかもしれない。


たとえば、私は一人の時間が好きだ。それを「変わっている」と思う人もいるかもしれないけれど、その時間が私にとって必要なものなら、堂々と大切にすればいい。自分のペースを守ることで、心が少しずつ自由になっていく気がする。


「生きづらさ」の正体に気づいた今、私は無理に自分を変えようとしなくなった。自分のままでいられる場所を見つけ、少しずつ「私らしい生き方」を築いていけばいいのだと思えるようになった。


私たちは、それぞれ違う生き方や感じ方を持っている。だからこそ、周囲と「ズレ」が生まれるのは自然なことだ。そのズレを無理に埋めようとするのではなく、ありのままの自分を受け入れることが大切なのだと思う。


「生きづらさ」は消えないかもしれない。でも、その正体がわかれば、少しずつ楽になれる。そして、私たちは「自分らしく」生きるための道を見つけていけるのだと思う。

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