第35話 成長を実感した瞬間
大人になっても、自分がどれだけ成長しているのかを実感することは難しい。日々の生活に追われていると、進歩どころか同じところをぐるぐる回っているような気さえしてくる。けれど、ふとした瞬間に「成長したな」と思える出来事があると、それが自分を少し前向きにしてくれる。
以前の私は、人と話すのがとても苦手だった。特に、自分の意見を伝えることが難しく、会話の中で相手に圧倒されてしまうことが多かった。何かを言おうとしても、「間違っていたらどうしよう」「嫌われたらどうしよう」と考えすぎて、結局言葉が出てこない。その結果、モヤモヤした気持ちを抱え込むばかりだった。
でも最近、そんな自分が少しずつ変わってきたと感じることがあった。それは、職場での打ち合わせのときのこと。いつもなら黙って相手の話を聞くだけの私が、思い切って「私の考えではこうしたほうが良いかもしれません」と意見を伝えたのだ。
それを言ったとき、相手がどう反応するのか怖かった。でも意外にも、「なるほど、その視点もいいね」と受け入れてくれた。その瞬間、心がふっと軽くなった。私の考えが間違っているかもしれないという恐れではなく、「相手と対話をする」という感覚がそこにあった。
その出来事が、私にとっての成長の実感だった。過去の自分だったら、黙ってやり過ごしていただろう。でも、今の私は、たとえ小さな一歩でも、自分の考えを伝える勇気を持てるようになった。それは、大きな変化ではないけれど、確かな進歩だった。
成長を実感する瞬間は、こうした些細な場面の中にあるのだと思う。決して劇的な出来事ではなく、日常の中で「できなかったことができるようになった」と感じる小さな気づき。それが、私たちの心を前向きにしてくれる。
もちろん、まだまだ課題はたくさんあるし、時には失敗して落ち込むこともある。でも、そうした中で少しずつ前進している自分を認めることで、また次の一歩を踏み出す力になる。
これからも、成長を実感できる瞬間を大切にしていきたい。そして、それが自分にとっての「生きる喜び」になっていくのだと思う。
成長とは、完璧になることではなく、昨日の自分より少しだけ進むこと。その小さな積み重ねが、やがて大きな変化につながるのだと信じている。
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