第32話 自分の中の「大人」を探す
大人になるとはどういうことだろう?
私はずっと、「大人らしい人」とは、自分の感情をコントロールし、冷静に物事を判断し、責任を持って行動できる人だと思っていた。けれど、そんな理想的な「大人像」を持ちながらも、自分がその姿に近づけているとは思えない日々が続いていた。
たとえば、怒りや悲しみを感じたとき、その感情をすぐに顔や行動に出してしまう自分。「もう少し落ち着けないの?」と自分を責めることがよくあった。また、小さな失敗に過剰に落ち込み、「こんなんじゃ大人失格だ」と感じることもあった。
でも、ある日ふと思った。もしかすると「大人になる」というのは、完璧な人間になることではなく、自分の不完全さを受け入れることなのではないか、と。
その考えが浮かんだのは、ある年配の方と話をしていたときのことだ。その人は自分の失敗談を軽やかに笑い飛ばしながら、「誰だって間違えるものさ。でも、それで人生が終わるわけじゃない」と話していた。その姿はとても自然で、穏やかで、私が思い描いていた「大人らしさ」とは少し違っていた。
そのとき私は気づいた。「大人らしさ」とは、何かを完璧にこなすことではなく、自分の弱さや失敗を受け入れながら、少しずつ前に進むことなのかもしれない。
それ以来、私は「自分の中の大人」を探すようになった。それは、自分の欠点や失敗を否定するのではなく、それを受け入れながら、どうすればより良い選択ができるかを考える姿勢だ。
たとえば、感情をコントロールできない自分に気づいたとき、その感情を無理に押し殺すのではなく、「今、自分はこう感じているんだな」と認めてみる。そして、その感情をどのように表現すれば、自分や周囲にとって良い結果になるかを考える。
また、小さな失敗をしたときには、「これを次に活かすためにはどうすればいいだろう?」と自問してみる。そうすることで、失敗がただの後悔ではなく、自分を成長させる経験に変わるように思えるのだ。
自分の中の「大人」を探す旅は、きっとこれからも続いていく。でも、その旅を通して気づいたのは、私の中にある子供の心と大人の理性が共存しているということ。どちらも大切な自分の一部であり、その両方を認めてあげることが、本当の「大人になること」なのかもしれない。
完璧でなくてもいい。私たちは、少しずつ自分の中の「大人」を見つけながら、成長していけばいいのだ。
その歩みの中で、私らしい大人を見つけていきたいと思う。
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