子供のまま、大人になってしまいました。

第31話 社会で認められるために

大人になると、「社会で認められること」が大切だと言われる。良い学校に行く、良い仕事に就く、周囲と調和しながら成果を出す――それが「社会での成功」とされることが多い。でも、私にとってそれは、どうしても難しいテーマだった。

学生時代、周囲に馴染めずに生きづらさを感じていた私は、「社会で認められる」なんて夢のまた夢に思えた。人付き合いが苦手で、プレッシャーに弱く、ミスを怖がる自分が、どうやってそんな大きなことを達成できるのだろう？

働き始めてからも、その思いは変わらなかった。職場での評価や人間関係に疲れ、「自分はこの場所にふさわしくないんじゃないか」と感じる日が何度もあった。周囲が当たり前のようにこなしていることが、私にはとても難しく感じられることが多かった。

でも、あるとき気づいたことがある。社会で認められるために、自分を無理に変えようとする必要はないのではないか、ということだ。

きっかけは、職場での小さな出来事だった。あるプロジェクトで私は、細かい資料作成やデータ整理を担当した。それは目立つ役割ではなかったけれど、同僚が「これがあったおかげでスムーズに進んだよ」と声をかけてくれた。その言葉を聞いたとき、自分のやったことが誰かの役に立ったことがわかり、心が温かくなった。

それ以来、私は「自分にできることを大切にしよう」と思うようになった。社会で認められるというのは、大きな成果を出すことだけではない。周囲に対して何かしらの貢献ができることで、少しずつ認めてもらえるのだと感じた。

たとえば、人と話すのが得意ではなくても、丁寧に仕事を進めることで誰かを助けることはできる。華やかなリーダーシップがなくても、裏方として支える役割を果たすことはできる。それが私にとっての「社会で認められる」方法なのだと思う。

無理に周りと同じようにならなくても、自分らしくできることを見つけることで、社会とのつながりを感じられるようになる。そう気づいたとき、私は少しだけ肩の力が抜けた気がした。

社会で認められるために大切なのは、自分を押し殺すことではなく、自分の個性や得意なことを活かすこと。これからも、自分らしい形で社会に貢献できる方法を探しながら生きていきたいと思う。

どんな形であれ、誰もが「社会で認められる場所」を持てるはずだ。それを信じて、自分なりの一歩を踏み出していこう。