子供のまま、大人になってしまいました。

第26話 子供の頃の傷が癒えない

子供の頃についた心の傷は、大人になれば自然と癒えるものだと思っていた。けれど、その傷跡は今でも私の中に残り続け、時折じくじくと痛むことがある。

いじめられた記憶、怒られた記憶、誰にも言えずに抱え込んでいた不安や孤独――そういった出来事が、ふとした瞬間に鮮明に蘇ることがある。何か特定の言葉や状況がトリガーになり、まるでタイムスリップしたかのように当時の感情に引き戻されるのだ。

たとえば、学校で感じた孤独感。休み時間になると、どこにも居場所がなくて、机に突っ伏して時間が過ぎるのを待っていた。友達の輪に入れない自分を責め、「私が悪いんだ」と思い込んでいたあの頃の感覚は、今でも忘れられない。

大人になった今、それらの経験が私に与えた影響を感じることがある。人と深く関わることへの恐れ、何かを失敗したときの過剰な自責感、周囲に認められたいという強い願望――どれも、子供の頃にできた心の傷が形を変えて残っているのだと思う。

でも、その傷があるからこそ、気づけることもある。人が傷つく痛みや孤独を、他人事として切り捨てることができない。誰かが落ち込んでいるとき、その心情に寄り添いたいと思うのは、自分自身が似たような経験をしてきたからだ。

それに気づいたとき、私は少しだけ心の傷を受け入れられるようになった。それは完全に癒えることはないかもしれないけれど、傷跡が私を形作り、私らしさを作る一部になっていると感じられるようになったのだ。

ただ、時折その傷が痛むときには、自分に優しくすることを心がけている。傷を責めるのではなく、「よくここまでやってきたね」と自分に声をかける。心が痛むのは、それだけ自分が一生懸命生きてきた証拠でもあるのだから。

子供の頃の傷が完全に癒えなくても、それを抱えながら生きていくことはできる。傷ついた自分を否定せず、その存在を受け入れることで、新しい自分を作っていけるのだと思う。

これからも、その傷と向き合いながら、自分らしく生きていきたい。そして、同じように心の傷を抱える人たちに寄り添える存在でありたいと思う。

傷は消えないかもしれない。でも、その傷を抱えたままでも、私たちは前に進むことができる。