第22話 大人社会の壁を感じる瞬間

大人になると、子供の頃には見えなかった「壁」がたくさんあることに気づく。それは、職場の人間関係や社会の暗黙のルール、周囲の期待――そうしたものが、私を時々息苦しくさせる。


たとえば、職場での会議。自分の意見を言おうと手を挙げても、話を遮られたり、軽く流されることがある。そのたびに、「もっと強く言わなきゃダメなのかな」と自分を責めるけれど、どうしても強気でいくことができない。


また、暗黙のルールが求められる場面でも壁を感じる。「この場ではこう振る舞うべき」「空気を読んで発言を控えるべき」――そんな見えないルールに縛られて、自分らしさを表現できないと感じることがある。


さらに、大人だからこそ求められる「成果」や「責任」も、私には重たく感じられるときがある。子供の頃は、「頑張ったね」と言ってもらえるだけで十分だったのに、大人になると「結果がすべて」のような空気がある。その重圧に押しつぶされそうになる瞬間もある。


こうした「大人社会の壁」を感じるとき、私は時々子供の頃を思い出す。もっと自由で、もっと自分に正直でいられたあの頃――それが今の私にとって遠いものに感じることがあるのだ。


でも、最近少しずつ気づいたことがある。大人社会には確かに壁があるけれど、その壁を壊そうと無理をする必要はないのだということ。壁の向こうに行くために頑張りすぎるのではなく、その壁とうまく付き合う方法を見つけることが大切なのかもしれない。


たとえば、職場の会議で意見を遮られたとき、その場で言い返せなくても後でメールで補足することができる。暗黙のルールが苦しいと感じる場面では、少しずつ自分の価値観を表現する方法を探ることができる。


そして何より、自分が安心していられる「居場所」を大切にすること。大人社会の壁の外側に、感情を素直に出せる友人や趣味の時間があれば、それだけでバランスが取れる。


壁を感じる瞬間があっても、それを完全に乗り越えることは求めなくていい。むしろ、壁を意識しながらも、自分らしく生きるスペースを確保することが大切なのだと思う。


大人社会の壁は確かに高く見える。でも、その壁を壊さなくても、別の道を見つけることはできる。自分に合った方法で壁と向き合いながら、自分らしいペースで進んでいきたいと思う。


どんなに高い壁でも、それを乗り越えるための別の扉はきっとどこかにあるはずだから。

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