第19話 感情が素直に出せる環境を求めて

感情が素直に出せる環境。それは、私にとって最も大切で、最も難しい場所の一つだ。


日常生活では、感情を抑えることが求められる場面が多い。職場では、どれだけ理不尽なことがあっても笑顔を作り続ける。友人との会話では、場の空気を壊さないようにと自分の本音を飲み込む。家族の前でも、「心配をかけたくない」と思って泣きたい気持ちを隠してしまう。


こうして感情を抑え続けるうちに、自分でも自分の本当の気持ちがわからなくなることがある。「私、何を感じているんだろう?」そんなふうに迷い、心がどんどん重くなっていくのだ。


でも、感情を隠す必要がない場所にいるとき、私は本当の自分を取り戻せる。たとえば、親しい友人と過ごす時間。何も飾らず、ただ自分の気持ちをそのまま話せる関係は、心にとっての癒しだ。相手が驚いたり、否定したりすることなく、「そうなんだね」と受け止めてくれるだけで、心が軽くなるのを感じる。


また、一人で過ごす時間も私にとって大切だ。誰に気を使うこともなく、泣きたいときに泣き、笑いたいときに笑う――そんな自由な時間があるからこそ、私は自分の感情を感じ直し、整理することができる。


感情を素直に出せる環境は、特別な場所に限らない。最近は、自分の気持ちをノートに書き出すことも多い。どんなに小さな感情でも、文字にすることで「これが私なんだ」と認められるようになる。それが、私にとっての安心できる環境の一部なのだ。


でも、こうした環境を見つけるのは簡単ではない。感情を表に出したときに否定された経験があると、次第に心を閉ざしてしまう。それをもう一度開くには、勇気と時間が必要だ。


だからこそ、私は自分が安心できる人や場所を大切にしている。そこでは感情を隠さず、ありのままの自分でいられるからだ。そして、そうした環境を持つことで、日常の中で感情を抑えなければならない場面にも耐えられるようになる。


感情が素直に出せる環境。それは、私たちが自分を取り戻すための大切な場所だ。これからも私は、その環境を見つけ、大切に守り続けていきたいと思う。


自分の感情を受け入れ、安心して表現できる場所――それがあれば、どんなに生きづらい日々でも、前を向いて歩いていけるはずだから。

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