第18話 感情を押し込める苦しさ

「感情を抑えるのが大人だ」

そんな言葉を、これまでに何度も耳にしてきた。怒り、悲しみ、戸惑い、喜び――どんな感情でも、表に出すことは「子供っぽい」と思われることがある。それが正しいと思い込んでいた私は、自分の感情を押し込めることを習慣にしてきた。


けれど、その結果、心の中はいつもぎゅうぎゅう詰めだった。抑え込まれた感情は、消えるどころかどんどん膨れ上がり、出口を求めて心の中をさまよう。そして最終的には、予期しない形で噴き出してしまうのだ。


たとえば、職場で何気なく言われた一言。「もう少しこうしてくれれば助かるんだけど」という言葉に、「そんなつもりじゃないのに」と心の中で反発が芽生える。でも、その場では笑顔を作り、「わかりました」と答えてしまう。


その日はそれで終わる。けれど、家に帰ると、抑え込んだ感情がじわじわと広がり、心が重くなっていく。そして、全く関係のないタイミングで涙が溢れたり、小さなことで爆発するように怒りが噴き出したりする。


感情を押し込めるのは、実はとても苦しいことだ。それは、心に自分で鍵をかけるようなもので、気づかないうちに自分を追い詰めてしまう。


最近、私はその苦しさを少しでも軽くするために、自分の感情と向き合う練習を始めた。感情を感じたとき、それを無理に抑え込まず、まず「今、自分はどう感じているのか?」と問いかける。そして、その感情が生まれた背景をゆっくり探るようにしている。


「どうして私はこの言葉に傷ついたのだろう?」

「なぜこんなに怒りを感じるのだろう?」


そうやって自分に問いかけると、心の奥にある本当の気持ちが見えてくることがある。そして、その感情を否定せず、「そう感じるのは自然なことだよ」と受け入れると、少しずつ苦しさが和らぐのを感じる。


感情を押し込めるのではなく、受け止めて扱うこと。それが、心を軽くする鍵なのだと気づいた。感情は、自分が何を大切にしているかを教えてくれるサインでもある。それを無視せずに向き合うことで、自分をもっと大切にすることができるのだと思う。


感情を押し込める苦しさから抜け出すには、自分を許し、感情を受け入れることが必要だ。そして、その感情を大切に扱うことで、心の中に少しずつ余裕が生まれていく。


これからも、感情と正直に向き合いながら生きていきたい。自分の心を無視せず、その声に耳を傾けることが、私にとっての「生きやすさ」につながるのだから。

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