第11話 おっさんくさい趣味に救われる

「それ、趣味っていうよりおっさんみたいだね」

そんなふうに言われたことがある。確かに、私の趣味は同年代の人たちと少し違うかもしれない。落語を聞いたり、将棋を観戦したり、レトロな喫茶店でゆっくりと本を読む時間を楽しんだり。そんな趣味が、私の心を支えてくれている。


私が落語にハマったのは、偶然テレビで見たのがきっかけだった。初めて聞く古典の言葉や、独特の間合いに引き込まれた。そして、日常の何気ない話や人情を、言葉だけで描き出すその世界観に感動した。それ以来、何かに疲れたときは落語を聞くようになった。古風な言葉に包まれると、不思議と心が落ち着いていくのだ。


将棋も同じだ。駒を動かすその一手一手に、物語がある。それを見ていると、頭が忙しく回転しながらも、どこか心が静まる。勝ち負けだけではない、深い駆け引きの中に美しさを感じる。そして、そんな静かな熱量に触れることで、自分の中の焦りや不安が少しずつ解消される気がする。


レトロな喫茶店も、私にとって大切な場所だ。古い木の香り、ゆったりとした空間、少し時代遅れの音楽が流れる中で飲むコーヒー。それは、どんなに疲れていても私をリセットしてくれる。人混みが苦手な私にとって、その静けさは心のオアシスだ。


こうした趣味は、確かに「おっさんくさい」と思われるかもしれない。でも、私はそれを誇りに思っている。というのも、これらの趣味は「自分らしさ」を取り戻せる時間を与えてくれるからだ。


多くの人が「若者らしい」趣味や流行を追いかける中で、私はどうしてもその波に乗れなかった。友人がSNSやゲームで盛り上がるのを見ても、どこか疎外感を覚えてしまうことがあった。でも、自分が心から楽しめるものを見つけたとき、流行に合わせる必要なんてないと気づいた。


趣味は、その人自身を映すものだと思う。そして、私の「おっさんくさい趣味」は、私の感性や価値観を象徴しているのかもしれない。それがあるからこそ、私は自分を保ち、少しずつ自分らしく生きることができるのだと思う。


だからこれからも、自分の趣味を大切にしていきたい。たとえ「おっさんくさい」と言われても、私には私の楽しみ方がある。それが、私を救い、支えてくれるのだから。


おっさんくさい趣味――それは、私の心に寄り添い、私を解放してくれる大切な存在なのだ。

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