子供のまま、大人になってしまいました。

第10話 「普通」とは何かを考えたとき

「普通って何だろう？」

この問いは、私の中で何度も繰り返されてきた。誰もが口にする「普通」という言葉。でも、その基準は誰が決めるのだろうか？

たとえば、「普通はこうするものだよ」と言われたときの違和感。相手にとっての「普通」が、私にとってはそうでないことが多い。朝早く起きるのが普通。社交的に振る舞うのが普通。感情をコントロールするのが普通。どれも私には難しい。

特に、「普通の大人らしく」と言われると、胸が締め付けられるような気持ちになる。大人らしさとは何なのか。それに合わせられない自分は、劣っているのだろうか。

でも、よく考えてみると、「普通」は人によって違うはずだ。ある人にとっての普通が、別の人にはとても特別だったり、全く理解できなかったりすることもある。なのに、私たちは「普通」に合わせようと必死になり、それを達成できない自分を責めてしまう。

私は、いろいろな場面で「普通じゃない」と言われてきた。学校を休みがちだったこと、感情を表に出しすぎること、人付き合いが苦手なこと――どれも、周囲からは「普通じゃない」と見られていた。でも、その「普通」の基準に合わせようとすればするほど、私は自分を見失っていった。

あるとき、そんな私に友人が言った言葉が心に残っている。

「普通に合わせなくていいよ。それがあなたなんだから」

その言葉は、私にとって救いだった。「普通」という見えない基準に振り回される必要はないのだと思えたからだ。

それ以来、私は少しずつ、「自分にとっての普通」を考えるようになった。私の普通は、感情豊かに生きること。少し不器用でも、自分に正直でいること。そして、たとえ他人から見て「変わっている」と言われても、それを大切にすることだ。

「普通」とは何か――その答えは一つではない。むしろ、自分にとって心地よい生き方を見つけることが、本当の意味で「普通」であることなのかもしれない。

だから私はこれからも、「普通」にとらわれず、自分らしい生き方を追い求めていきたい。たとえそれが少し遠回りに見えたとしても、自分にとっての「普通」を大切にしながら進んでいこうと思う。

「普通じゃない」と言われたことのあるすべての人へ。私たちの普通は、私たち自身が決めていい。それこそが、本当に大切なことだと思うから。