第12話 面倒くさい先輩

 私は高校のときにハンドボール部に所属していた。先輩たちとの仲も良好で心地よかった。そんなあるとき、先輩から映画を一緒に見に行かないかと誘われた。お誘いは嬉しかったけど、私の少ない小遣いでは地元から難波なんばに行き入場料を払うのは無理だった。私は辞退した。でもその後、別の先輩がわざわざ1年の教室まで友達を連れて私を呼び出し、なんで俺は映画に誘ってくれなかったんやと詰め寄ってきた。私、何も知らないし、映画にも行ってないし、どないしようってなった。今回の場合は私ではなく主催者の先輩を責めるのが当然だろう。ホントに私何も知らないし。今ではなんでハンドボール部のみんなを映画に誘っておきながらその先輩だけにだけ声をかけなかったかなんかわかる。面倒くさくて、後輩にしか当たれない先輩だったからね。


 他にもめんどくさい先輩はいた。留年して私と同じ1年になった先輩。私が伊達めがねをかけていることを知ると、登校と同時にその伊達めがねを奪って自分が掛ける。女の子にもてたいのかな? でも現実はみんな引いていた。クラスの集まりとか一切呼ばれずに2年進級時には退学していた。


 映画に誘ってくれたハンドボールの先輩は今でも尊敬に値すると思うが、自分勝手な先輩は嫌いだ。その映画に誘ってくれた先輩は私よりはるかに優秀だと思うが、2浪しても受かる大学がなくて専門学校に行ったのが残念だ。勉強でも知らないことを私に色々教えてくれた先輩なのに。今は縁がないことを悔やんでいる。年賀状でも出していたらよかったのにって。私が浪人して関西では割と有名な私立大学に受かったことが気に入らなかったのだろうか? 今や音信不通。でもその先輩から貰ったお前なら受かるよって書いてくれた年賀状は今でも大切に持っている。

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