第6話 地元暮らし

 私はずっと地元に住んでおり、引っ越しもしたこともない。大学も幸い実家から通える距離だったし、結婚願望もなくて独身だし、慣れた地元を動く必要もない。でもそんなときに困ることがある。それは顔バレ。


 ちょっと調子に乗ってお酒を飲みすぎ肝臓を壊した私は定期的に地元の病院に通院している。そんなときに見ず知らずのおばちゃんから声をかけられた。「紀伊さんですよね」って。私は記憶を必死に掘り起こすがそんな人知らない。困惑していると「紀伊さんの妹さんと同級生だったんですよ」って。それって娘、息子? 一体どっちなんと思いながらも、そんなこと私に言われてもなんて答えたらいいのか。同級生ならまだしも妹の同級生の親なんて知らんし。今も元気ですか? もイマイチ違うしなぁ。本当に返答に困った。この前の忘年会で、今でも付き合いのある中学生の同級生に聞いた話だけど、昔、スーパーでおばちゃんに声をかけられて「私、○○の母です。覚えている?」とかろうじて同級生だった母親から声をかけられたときはかなり困ったらしい。そんなに友達付き合いもない同級生だったので「はぁ」って答えるのが必死やったらしい。本当に地元はそんな偶然の出会いがあるから怖い。


 私は今でも実家暮らしをしているが、ご近所の高齢化により、暇を持て余した老人たちが噂話で盛り上がるからさらに困る。例えば私がスーパーでビールを買ったら、なぜかその話が私の母親の耳に入る。そんなんどうでもいいやんか、と思うのだが老人たちには唯一の楽しみなんだろう。それに私が何故か野良猫に好かれる体質で、寄ってくる野良猫を撫でているとうちにクレームが来た。例えばエサやりとかはなんかわかるけど、撫でたくらいでクレーム? それは無茶苦茶でしょう。元気な老人が多い地域にはこういう問題があるのは事実だ。他にもいろいろあるけどただの愚痴になるから割愛。


 私は一生地元を離れる気はないですが、皆さんはどうですか? 新しく田舎に転居した人のトラブル話はよく聞きますけど、ちょっとしたことがストレスになるんですね、地元一筋も。

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