第51話 求めて
あの衝撃的な事実を告げられてから、師匠は今までより座ることが増えた。
俺は空き時間さえあれば、森に霊獣を狩りに行くようになった。
「まだ戦っても下位までだぞ、分かっているな?」
「分かってますよ。行ってきます」
俺は獲物を探しに、森へ入る。
危険なのは分かっている。
だけど、強さが必要だった。
木の枝から枝に飛び移りながら、相手を探す。
いつもの範囲より更に森の奥まで入る。
すると、前方から何かを捕食する音が聞こえた。
何か居るな。
俺は警戒心を高めながら、葉で隠れるように進む。
そこで俺は見つける。
胴体を真っ二つにされたコボルトの大量の死体を。
その中心に居るのは、巨大なサソリ。
全長は五ユードを越えており、禍々しい紫色を基調とした鎧のような体。
人間など一刀両断できそうな一対の大きな鋏(はさみ)が輝いている。
尻尾からは毒が垂れており、一匹のコボルトは顔が溶かされていた。
将級中位はあるな。
退くべきか?
いや、今の俺ならいける。
全身を鱗で覆い、尻尾を生み出す。
硬そうだ。狙うは頭部だな。
俺はコボルトを食べるのに夢中になっているサソリに木の上からゆっくり近づく。
そして、飛び降りると回転し、尻尾で渾身の叩きつけで先手を打った。
だが、サソリは直前で俺に気付き、その大きな鋏で自らを守った。
その一撃はその鋏を吹き飛ばすも、砕ける様子はない。
畜生……。
かなり硬いな。
「ギシギシギシギシ!」
いきなりの攻撃で怒ったのか、サソリは不気味な音を出しながらこちらに襲い掛かって来た。
鋏を開けて、こちらに振るう。
やばい!
俺は咄嗟に跳んで、木の枝に登る。
だが、サソリは俺の背後にあった木をその鋏で両断した。
まじか……!
かなり太かったのに。
乗っていた木が両断されたため、違う木に飛び乗る。
あの鋏の一撃を受けたら、全力の霊気で体を覆ってもおそらく真っ二つだな。
凶器である鋏を警戒して逃げ回っていると、突然その尻尾が槍のように襲い掛かって来た。
何とか躱したが、避けた先の木がその毒で、一瞬で溶かされた。
硬いし、攻撃も強いし、何て厄介なんだ。
何か弱点はないのか?
腹部の方がまだ装甲が薄い可能性があるな。
俺は木の枝の更に上に登り、上からサソリを挑発する。
それに苛立ったサソリが俺の乗っていた木を鋏で切断する。
俺は落ちないように木の枝から枝に飛び移り、逃げ回る。
そして、遂に怒ったサソリが枝の上に居る俺を直接狙うためにその尻尾で突きを放つ。
俺は地上から四ユードは遠い枝に立っている。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます