第48話 珍しい
全身は固い鱗で覆われ、六本の太い足に四本の目。
その目は明らかにこちらを獲物として見ていた。
リーグルクロコダイルはその巨体に見合わない俊敏な動きで、一番近い師匠に襲い掛かる。
師匠は静かに剣を抜くと、リーグルクロコダイルに向かって振るった。
その剣は敵の眉間を捉え、斬り裂いた。
鮮血が舞う。
だが、傷は浅かったのか、奴の勢いは止まらない。
リーグルクロコダイルは突如方向を変え、肉のあるこちらに向かってきた。
「すまん、そっちに行った」
「こちらで仕留めます。ネロ、行くぞ」
「ガウッ!」
ネロはミラさんのように全身に影を纏うと、風のように距離を詰める。
そして、その影がネロから放出されると、リーグルクロコダイルの目を覆った。
突如視界を失ったリーグルクロコダイルが混乱し動きが鈍る。
「ナイス、ネロ!」
俺は尻尾を生み出すと、サマーソルトの勢いで尻尾を奴の背中に叩きつける。
アルテオックスにも浴びせた俺の得意技である。
その一撃は奴の鱗を砕いた。
「硬い……鱗だけか」
将級の鱗は伊達じゃない。
だが、奴の盾は砕かれた。
ネロは大きく跳躍すると、影で巨大な槍を生み出す。
そしてその槍を生身がむき出しとなった背中に叩き込んだ。
「ガアアアアアアアアアアア!」
リーグルクロコダイルは大きな悲鳴を上げて、暴れまわる。
だが、明らかな致命傷である。
しばらく暴れまわった後、リーグルクロコダイルは静かに力尽きた。
「まさか、討ち漏らすとは。すまない」
師匠が申し訳なさそうに言う。
「師匠があの程度を討ち漏らすなんて珍しいですね。いっつも一撃で仕留めるのに。油断しましたね?」
「やかましい」
調子に乗ったら殴られてしまった。
痛い。
「師匠をからかうくらい余裕があるのなら、午後は更に厳しくしないとな。次の獣化をそろそろ覚えて欲しいものだ」
「うっ……それは速く覚えたいん、ですけど……」
全体的に能力は上がった自負はあるが、獣化はまだあれ以来進んでいない。
後は手足と顔の獣化である。
この二つをマスターすると、現主の奥義である完全獣化に大きく近づく。
だが、師匠の話では完全獣化は獣人種と他の種族のハーフだとできない者が殆どらしい。
自分のルーツすら分からないのに、どうしたらいいんだろうか。
「ハーフでも出来た者はいる。諦めるな」
「ありがとうございます」
「もう一年か……」
師匠はそうぽつりと呟いた。
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