第45話 ネロの気持ち

 私はネロ。

 リオルとはお母さんと一緒に初めて外に出た時偶然会った。

 お母さんが獲って来た獣以外で、生き物を初めて見た。

 倒れているな、と思って見ていたら、起きた途端に警戒されちゃった。


 怪我して心配だったから、怪我を舐めてあげたら仲良くなれたの。

 リオルに初めて貰ったお肉も美味しかった。

 お母さんが来た時、リオルのことお友達って紹介したら家に招待することになった。

 リオルは一人だったみたいで、あの日以来、リオルはうちの子になった。

 それからは兄妹のように毎日一緒に暮らした。


 リオルは私と同じでまだ子供なのにいっつも頑張って強くなろうとしていた。

 私はリオルと遊びたかったけど、夜までは我慢した。

 お母さんからは、貴方も強くなるように頑張りなさいって言われちゃったけど。

 夜、リオルはいつも遊んでくれた。


 一緒に外に行くのも、洞穴の中で遊ぶのも、夜抱き締められながら寝るのも大好きだった。

 このままずっとお母さんとリオルと過ごしていたかった。

 けど、緑色の龍とお母さんが戦ってから全てがおかしくなった。

 お母さんはもう二度と私を舐めてくれることも、遊んでくれることがないんだって、リオルとお母さんの元に行った時に理解した。


 いつも温かったお母さんも、あの時はとても冷たかった。

 起きてよ、と何度も呼んだ。

 けど、二度とお母さんが起きることはなかった。

 目の前が真っ暗になったけど、横には同じように泣いていたリオルが居たから私だけじゃないと思えた。


 あの日以来、リオルはクロエという人に弟子入りしてしまった。

 リオルはお母さんの仇を取ると言って、毎日死にそうなくらい頑張っている。


 あの龍は本当に強かった。

 世界一強いと思ったお母さんより強かったんだから、私達が勝てるとは思えない。

 仇を取りたいと思うけど、リオルまで死んでほしくない。

 私も強さを求めるようになった。


 もう家族を失いたくないから。

 お母さんから影を使う戦い方を少しだけ学んでいた。

 私達の種族は影を扱うらしい。


 最初は全く分からなかったけど、段々使い方が分かるようになった。

 リオルはよく無茶するから、私がしっかり守ってあげないと。


「ちょっと、霊獣狩りに行ってきます」


 昔を思い出していると、早速リオルが獲物を探しに行くみたい。


「ガウーーーー!」


 私がついて行ってあげないと。

 私はリオルの横に付いて、森へ向かった。

 しばらく歩いていると、前方から生物が這う音が聞こえた。

 多くの脚が地面を這うような音。


「ガウッ」


 私はリオルに警戒するように促す。

 私の言葉に聞いて、リオルが剣を抜く。

 リオルは体を鱗で覆い、戦闘態勢になった。


 もう近い。

 木々の隙間から、その姿が見えた。

 大きな百足(むかで)の霊獣。


 私の三倍はありそうな程大きな体に、大きな顎。

 鎧のような甲羅に覆われていた。


「ネロ……行くぞ」


 リオルはそう言うと、一気に距離を詰めて剣を振るった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る