第20話 生存率0%

 ぱちぱちと火が爆ぜる音が聞こえた。

 心地よい焚き火の音だ。

 え?


 俺は……どうなったんだ⁉

 俺は咄嗟に跳び起きる。

 ネロを探すと、近くで寝ている。どうやら無事なようだ。


 そして、目に入った長身の女性。


 綺麗な人だけど……全く表情が動いておらず冷ややかな印象も受ける。

 即座に剣を探すが、傍にない。

 取られたのか!?

 すぐさま女性と距離を取る。


「起きたのか? 少年」


 女性は肉を食べながら、言った。

 初めての人。ずっと待ち望んでいた人間との出会い。

 嬉しいはずだが、状況を理解できず警戒してしまう。


「良い警戒心だ。それくらい警戒しないとこの島では生きていけないだろう。私はクロエだ」


 クロエさんはそう言って、俺の腹部を指さす。

 腹部を見ると、簡単な手当てがされていた。


「治療ありがとう……ございます。すみません……聞きたいことが! お姉さんは村に住んでいるんですか? 村はこの島のどこにあるんですか!?」


 俺は色々聞きたいことが溢れ出し、一気に聞いてしまう。

 だが、クロエさんは怪訝な顔を浮かべる。


「お前は何を言っている? 村なんてある訳ないだろう。ここに居るのは罪人くらいのものだ」


「え?」


 罪人?

 その予想外の返事に俺は固まってしまった。


「お前こそ……ここの原住民の子ではないのか?」


「違います! 俺はエルドール王国のネルト村に居た農民の子リオルです! 十一歳の誕生日を迎えて、気付いたらこの島に居たんです!」


 俺の言葉を聞き、クロエさんは口を開けたまま固まる。


「エルドールから……? いつからここに?」


「分かりません? 数ヶ月間は居ると思います」


「ただの農民の子が良く生き残れたものだ。ここは通称『死の島』。罪人を島流しにする、生存率0パーセントと言われる地獄の島だ」


「死の島……?」


 俺はクロエさんの言葉に衝撃を受ける。

 だが、同時にどこか納得する所もあった。


「おかしいと思わなかったのか? 厄災級の霊獣がぽんぽんと出てくる島で人間が生き残れると思うか? ここに住んでいた先住民は皆、霊獣達に負けたのだ。人間達が生存競争で負けた島に罪人達を送り込んで殺す訳だ。直接殺すのは憚られる人間をな」


 クロエさんは淡々と言った。全く表情には動きがない。


「俺は何もしていませんよ! 何もしてないのに……こんな所に居たんです!」


 分からない。

 クロエさんの情報は俺を更に混乱させた。


「私に言われても知らんさ。エルドール王国の事情なんて知らないからな」


 この島に居るのは罪人だけだなんて……あれ?

 罪人しか居ないのなら目の前にいるクロエさんは……。


「ここに居るってことはクロエさんも罪人、ということですか?」


 そうなってしまう。

 剣はない、が霊気は戻っている。尻尾は出せる。

 罪人なのが事実なら……危険だ。


「どう思う?」


 クロエさんは冷ややかな表情でこちらを見ていた。

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