第15話 愛を込めて花冠を
それから更に二ヶ月が経過した。
この島に来て、結構な時間が経っている。
ここまで生き延びられたのはミラさんの庇護下に居たからだろう。
ネロは更に大きくなり、全長一ユード近くまで成長した。
最近はミラさんに連れられ狩りにも行っているようで、油断をしているとすぐに抜かされそうだ。
俺はいつものように森に居た。
目的は……コボルトへの雪辱戦だ。
前回のような油断はしない。
俺はコボルトを見つけると、再び木の上に登る。
コボルトが真下にやってくるまで俺はひたすら木の上に潜伏する。
やがて真下に来た時、俺は全身の霊気を尻尾に集中させる。
そして背後を取るように飛び降りると、回転を加えた渾身の一撃を放つ。
「ガウッ⁉」
直前に気付いたコボルトが盾を構えるが、遅い。
俺の一撃は盾を粉砕し、そのまま敵の肩に直撃した。
肩の骨が折れる鈍い音が森に響く。
「ギャオオオッ⁉」
コボルトは悲鳴をあげるが、俺は一気に畳みかける。
首を狙い、剣を振るう。
コボルトはなんとか逃げるように後退した。
俺は追い打ちをかけるように、尻尾で突きを放つ。
コボルトは突きを、体を逸らすことで躱した。
躱したコボルトの腕に尻尾を巻き付け、こちらに引っ張る。
そして、バランスを崩したコボルトの首に剣を突き立てた。
肉を断つ嫌な音がする。
断末魔のような小さな声を上げ、コボルトはそのまま動かなくなった。
「悪いね」
俺は静かに解体すると、霊胞を喰らう。
体が熱くなる。
久しぶりの感覚だ。
筋肉がより強靭に、霊気が増えたのが分かる。
病みつきになる感覚だ。
「ふう……」
中型とも戦える。
だが、真っ向勝負だと未だにきついのも確かだ。
とはいえ、着実に成長している。
コボルトの肉でもミラさんに贈ろうかと思ったが、いつも肉をお礼として渡している。
たまには違う物を持って行くか。
だが、この島でいったい何を上げたら良いのだろうか?
綺麗な石?
昔、母さんには何をあげていたっけ。
お金もなかったから大した物は上げられなかった。
俺が作った下手な花冠を喜んでくれた。
「それならここでも作れるかもな」
俺は森を回り、少しずつ花を摘む。
普段は気付いていないが、様々な花が咲いており自然の豊富さを感じる。
けど、頭に乗せるのは難しいかもな。
俺はミラさんの首につけられるような大きな花冠を編む。
一つ一つ花を丁寧に巻いていく。
そして黙々と作業をしてしばらく、ようやく花冠が完成した
島の花は茎も強靭なため少しは長持ちすると信じたい。
冠というより、首輪に見える。
俺は巨大な花冠を持って、住処に戻る。
「ガウ?」
手に持っている花冠を見て、ミラさんが首を傾げる。
「ミラさん、頭下げて。こっちに」
ミラさんは首を傾げながらも、頭を下げる。
俺はその首に花冠を通した。
「いつもお世話になっているからお礼です」
俺の言葉を聞き、ミラさんがこちらを見つめている。
やはり要らなかっただろうか?
段々不安になってきた。
少しして、ミラさんがペロリと俺の頬を舐めた。
ミラさんは尻尾で俺を捕まえると、そのままお腹に抱き寄せる。
「むぐっ!」
俺はしばらく捕まったまま、逃げることができなかった。
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