第14話 VSコボルト

 早朝。


 俺は軽く運動をした後、獲物を獲りに森へ入った。

 最近は猿などの霊獣などは大きく苦戦せずに、狩ることができるようになった。

 次は中型霊獣を狙う。


 俺は森の中を探し、少し先にコボルトを見つける。

 コボルト。

 二足歩行をする犬のような霊獣であり、小型よりの中型霊獣と言っていいだろう。


 その両手にはこん棒と木の盾を持ち、その動きは戦士のようだ。

 体格も今までの敵より一回り大きい。

 俺は静かに木の上に登ると、コボルトが真下に来るのを待った。


 しばらくして自分の木の下にまでコボルトがやってきた瞬間、俺は木から飛び降りる。

 尻尾を出すと、そのまま首を狙って渾身の振り下ろしを放つ。


「ガウッ⁉」


 直前に気付いたコボルトが咄嗟に盾で己を守る。

 盾は完全に止めきれることができずに、宙を舞った。


「盾をなくせば十分。やろうか……」


 欲を言えば今の一撃で痛手を負わせたかったが、盾を潰した。

 コボルトはこん棒を構える。

 戦いが始まった。


 霊獣の腕力で放たれる一撃は重く、とてもじゃないが体で受け止めることはできない。

 尻尾以外なら。

 俺は尻尾でこん棒の一撃を受け止めつつ、槍で攻める。


 だが、この戦法では中々致命傷までいかない。

 やっぱり、尻尾の一撃じゃないと厳しいな。

 俺はいっきに距離を詰めると、槍で突きを放つ。


 コボルトは上半身を動かし、突きを躱した。

 そこで相手の足に尻尾を絡ませひっぱることで、バランスを崩す。


「グアッ⁉」


 今だ!

 俺は大きく跳躍すると、敵の首を狙い尻尾で渾身の振り下ろしを放った。

 それは見事に奴の首に直撃し、コボルトを吹き飛ばした。


 手ごたえあり。

 俺は霊胞を奪うため、コボルトに近づいた。

 だが、その直前コボルトが体を起こし俺にとびかかる。


 まだ生きていたのか!

 俺はコボルトによって、地面に叩きつけられた。


「があああっ!」


 まずい!

 押しのけようと必死になるが、コボルトの方が俺よりはるかに力が強い。

 血走ったコボルトが、俺の首めがけて牙を向ける。


 やられる!

 そう思った次の瞬間、何かがコボルトの首を刎ねた。


「え……?」


 頭部を失い倒れるコボルトを見て、俺は小さく驚きの声を上げた。

 周囲を見渡すも何もない。

 だが、黒い何かがコボルトの首を飛ばしたのだ。


「あれは……」


 どうやら俺は守られていたらしい

 実力不足か……。

 油断したなど、なんの言い訳にもならない。


 死んだら全て終わりなんだ。

 俺は死んだコボルトを見て、霊胞も食べずに静かに住処に戻る。

 住処ではミラさんがゆったりと座っている。


「ありがとうございます」


 俺は頭を下げる。

 ミラさんは小さく頷いた後、住処の奥に見て小さく吠える。


 ん?

 何かあるのか?

 よく分からないが、ミラさんの言うことに静かに従う。

 奥へ向かうと、そこには白骨死体となった人間の姿があった。


「うおおおおおおおお!」


 思わず大声を上げる。

 ひ、人? 


 恐る恐る近づくも、確かに人の骨である。

 奥にはこんなものがあったのかよ。

 死体ではあるが、確かにこの島に人は居たのだ。


 だが、現在は一人も居ない。

 よく分からないが、百年も前の死体ではないと思う。

 ほんのわずかだが、確かな希望だ。


 俺はそう思うことにした。

 死体のそばには、生前使っていたであろう盾と剣。そしてリュックが置かれている。リュックの中には、ナイフが入っていた。


 これを使え、ってことなのかな?

 どれもこの島では中々手に入らない貴重な物だ。

 死者から貰うのは申し訳ないが、許してもらおう。


「すみません。貴方の大切な道具を頂きます」


 俺は両手を合わせ、頭を下げる。

 その後、死体を丁寧に埋葬した。


 短剣は解体するのにちょうどよさそうだ。

 リュックに手を入れると、中から毛布や薬、革製の水筒など様々な物が入っている。


「これ……リュックより多くの物が入ってないか?」


 小さいリュックになぜこんなに入っているんだ。

 中を覗くと、何も見えない。

 色々探ってみたけど、どうやら不思議な力で沢山入っているらしい。

 マジックバッグという、凄い量が入るものがあると昔父さんから聞いたことがあるが、本当にあるとは。


「凄いな」


 軽いし、これなら持ち運びも楽だ。

 早速手に入れた剣と盾を持ち、森へ向かう。

 小型の狼と出会い、剣を使い狩りを行った。


 盾を持つと安定感が違う。攻撃を受け止め、剣と尻尾を使い攻め立てる。

 うん。使いやすい。

 やはり当たり前だが手作りの槍より使いやすい。

 仕留めた狼を解体し、住処に戻る。


 俺は最近、獲物の一部をお礼としてミラさんに渡している。

 ミラさんはそれを一口だけ食べた後、いつも残りを俺に返す。

 どうやらもっと食べろということらしい。

 ミラさんから見ると、やはり俺はまだ子供らしい。

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