飼い猫が扁平上皮癌になりまして

早く帰りたい

　仕事が終わったら、学校が終わったら、家に帰りたい。それは全人類共通の認識である。

　私も仕事が終われば即帰宅したいため、定時と同時に仕事場を出る。

　基本的に残業は無いに等しいのと、定時に職場を出たところで文句を言う人もいないので運よく即帰宅が可能なのである。

　前までは帰ってダラダラしたいから早く帰宅したいという気持ちだけで動いていたが、今は違う。

　今は、クロに早く会いたくて帰路に着く。

　一つ目の理由は、言葉の通りだ。クロに会いたい。残り少ない彼との時間を一分一秒無駄にしたくないからだ。

　二つ目の理由は、クロが他界していないか、命に関わる状況にないか心配だからである。

　仕事の間、私は家にいない。

　故に、家の中で何が起こっているかわからない。だから、その状況を早く知りたいのだ。

　（ペットカメラをつけているが詳細な行動はあまり把握できないため、会って確認したいのだ）

　帰宅するまでの間、私の心臓はバクバクと跳ねている。

　クロは大丈夫だろうか、息を引き取っていないだろうか、と最悪の状況を考えながら帰宅する。

　けれど、彼は意外と普通の顔で迎えてくれるので、ほっと胸を撫で下ろすのだ。

　「ただいま」と体を撫でると、ゴロゴロと反応してくれる。

　そんな彼が愛しくてたまらない。

　今日も生きていてくれてありがとう。