あぁ、救世主

 目が見えなくなったり、おむつをつけるようになったりと、前までのクロとは明らかに違う姿に困惑している日々だが、一つだけ、確かに私を救っているものがある。


 それは食道チューブだ。


 食道チューブを施す前は猫の写真や、どのようなことが行われるかを知り「こんなこと、愛猫にできない……!」と思っていた。

 しかし、手術はそこまで長丁場ではなくクロ自身にも負担がない。

 傷口を痛がるかと思ったが、クロ自身、自分の体内にチューブが通っているという自覚がない。

 首元から垂れるチューブを除いては、本当にただの猫である。


 最初、手術が終わった後の私は少し混乱していた。

 首に包帯のようなものをぐるぐる巻きにしたクロを見て、ひどいことをしてしまったと後悔した。

 そして、このチューブから食事を入れるという難易度の高そうなことを私ができるのだろうか? と不安であった。


 しかし、いざ食道チューブを使って食事をさせると、その簡単さに笑いさえ出た。

 今まで食事や薬を飲ませることに苦悩していた時間はなんだったのかと思うほど。こんなに簡単で、クロ自身も不快さを覚えていないのなら、もっと早くにするべきだったと後悔した。


 チューブに食事を通している間、クロはまるで何もされていないかのように振る舞っている。

 時折こちらをチラリと見るものの、けれど普通の顔をしたままぼんやりとしている。


 彼の胃が、食事で満たされている現状が嬉しい。

 彼に、なんの苦痛も与えずに薬を投与できる現状が嬉しい。


 食事を与えたところで、彼は良くならない。

 日々、悪化する一方だ。

 けれど、食事のたびに受ける痛みに苦しむことなく、空腹に耐える時間は幕を下ろした。


 食道チューブの手術をしたことで、私は彼が少しでも楽になれたと思っている。


 あの時、私に食道チューブを勧めてくれた動物病院の方々、本当にありがとうございました。

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