おもらし
ついにきてしまったかと私は思った。
一緒に寝ていた時。ふと感じた違和感。濡れた感触、微かな暖かさ。
パッと起きて確認すると、彼が尿を漏らしていた。
思わず声が出た。彼が寝具に漏らしたことが嫌だからではない。
とうとうきてしまったのだ。
トイレにさえ行けなくなるほど、彼は衰えてしまった。
うちの愛猫はみんな、粗相をしたことがない。優等生だ。家にお迎えした途端に、トイレをすぐ覚える。場所を変えても、すんなりと覚える。
だから、愛猫の粗相に戸惑った。
彼がおもらししたということは、つまりかなり深刻な状況である。
悲しさに包まれたまま寝具を剥ぐ私を見て、漏らした張本人であるクロはすまし顔をしていた。
それが可愛くて、笑ってしまった。
きっと彼は漏らしたことさえ分かっていないのだと思う。
それはすごく悲しいことだけど、愛くるしさも感じた。
翌朝、再び漏らした。昨日の出来事はたまたまではないのだなと再確認し、肩を落とした。
うちにおむつは常備されていないので、ドラックストアで購入した。
居心地は悪そうだが、我慢してもらうしかない。
きっと、ここからどんどん状況は悪化するのだろう。
元気だった頃の彼とは全く違う状況に、戸惑いと悲しさを感じる。
けれど、こういう思いをしながら愛しいペットを看取った人たちがこの世にはたくさんいて、悲劇のヒロインは自分だけではないのだと思うと、頑張れる気がする。
みんな、きつい思いをして別れを告げてきたのだ。
私だけではない。
大丈夫。大丈夫だ。
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