失敗した

 久しぶりに薬を飲ませるのを失敗してしまった。

 ここ最近はうまく行ってたんだが、今日はどうやら口の中に薬ちゃんが残留していたらしく、それが溶け出して泡を吹き出した。


 クロは薬を飲ませると泡を吹く。これは猫特有? 動物特有? のモノらしい。

 泡を吹いて薬を外へ出そうとする。うちの子はその泡の量が多い。そして口の中の腫瘍と相まって、血の泡を吹く。


 「今日はやっと飲ませることができた……安心……」と思って仕事へ行く準備をしていた矢先の出来事で、さすがに私も疲弊した。


 敗因は分かっている。私のミスだ。


 いつもは薬を飲ませた後、口の中に残らないように何度かシリンジで液体の餌を投入する。

 けれど、今日はそれが甘かった。「……まぁ、大丈夫だろう。飲めただろう」という慢心が、彼に苦しい思いをさせてしまった。


 正直なところ、私は完全に介護疲れのような状態に陥っている。

 クロのことが心配で眠れないし、餌や薬を与えるときはストレスで胃が痛くなる。

 彼に痛みを与えながら餌を与えることや、もし薬を飲まなかったら……と考えただけでズンと気分が落ち込む。


 薬の時間が近づくたびに「あぁ薬の時間だ。また嫌われるのか、痛い思いをさせる

のか……」と考えてしまい、頭痛がひどくなる。


 本当に辛いのはクロであるにも関わらず、私がこんな状況に陥るだなんて……情けない。


 今日は薬を飲ませることができなかったので、食道チューブの手術日を早めることはできないかと動物病院に相談へ行った。

 結果は、ダメだった。

 しかし、痛み止めや点滴は打ってくれるらしいので、そこは救われる。


 口の中に腫瘍があるのに液体の餌や薬を入れ込まれる……どんな痛みなんだろうか。きっと、ひどく痛いだろう。

 とても私は残酷なことをしている。飼い主失格だ。


 けれど、そんな私に慈悲のように擦り寄り、膝へ乗せろと促すクロはとても心優しい猫だと思う。

 今朝も薬を飲ませるのに失敗した私に甘えてきた。

 ひどいことをしている、この私に。

 優しい彼に私は相応しくないかもしれない。

 もっと良い飼い主であったら、クロはこんな苦しい思いをしなかったのだろうか。

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