第33話 初遊園地
33 初遊園地
「――おお、ここが遊園地!」
一時間ほど電車に揺られた後――ココ達は無事遊園地に辿り着く。
事前にスマホで前売り券を購入した二人は、そのまま入園したのだ。
正面には遊園地のシンボルである、観覧車が姿を覗かせている。
左を見ればジェットコースター、右を見れば室内プールまで完備されていた。
「……え? 室内プール?」
まさかと思って、恋矢はもう一度遊園地の案内図を確認する。
彼は迂闊にも、室内プールの存在を見落としていた。
「んん?
もしかして、恋矢、気付かなかったの?
私はてっきり、恋矢もそのつもりだと思っていたのだけど?」
「………」
そのつもりとは、どう言う事だ?
プールの案は、ボツになったのでは?
恋矢としてはそう思うしかないが、ココは実に乗り気だ。
「私、彼氏と一緒にプールとか行った事がないんだよね。
一体どんな気持ちになるか実験する為にも、プールに行ってみたい」
「……待て。
今、聞き捨てならない事を言わなかったか?
実験って――」
――それでは、自分はモルモットの様ではないか。
これもココ流の冗談かと思う一方で、恋矢は気が気でない。
同い年の女子と、プールに行く。
年上の女性は守備範囲外の恋矢にとって、それは余りに刺激的な事だ。
いや、もっと踏み込んで言うなら、恋矢はココ以外の女子に興味など無い。
身近な存在であるが故に意識せざるを得ない恋矢は、大いに狼狽した。
「……いや、俺、ココの水着姿に何て興味ねえし」
「だから、その反応がヒロインその物なの。
完全にツンデレで、どこまでも乙女じゃない。
いいから、先ずはプールで汗を流しましょう。
その後の事は、適当に考えると言う事で」
「………」
どうやら、自分は本当にモルモット扱いされているらしい。
それとも篠塚ココとは、天井恋矢が考えている以上に大胆なのか?
しかし、どちらにせよ、女子にこうまで言われたら引くに引けない恋矢だった。
彼は眩暈さえ覚えているが、今度こそ覚悟を決める。
「お、おい、待てよ、ココ!」
室内プール場に向かって先行するココを追い――天井恋矢は大きく息を吐いた。
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