第12話 これって本当にラブラブ?
12 これって本当にラブラブ?
「で、敦ちゃんが言うには〝ココの普通な所は、その胸の大きさ位よね〟って事なの。
私は当然、この悪質なセクハラに抗議したわ。
具体的に言うと敦ちゃんが赤ちゃんを産めなくなるまで、お腹を殴り続けたの。
いえ、もちろん冗談よ?
……はははは」
「………」
その割に目が笑っていないんですよ、ココさん。
恋矢としてはそう思うしかないのだが、彼はココに同意する。
「そうだな。俺としても加賀をあの時、始末しなかった事が悔やまれる。
ヤツさえやっておけば、ココはこんな奴にならなかった……!」
「恋矢さん、恋矢さん、本音がダダ漏れしている。
恋矢が言う私って、どんな奴?
……後〝あの時〟って何時なの?」
ココとしては覚えがありすぎる為、何時だか判断がつかない。
加賀敦はそれ位、色々やらかしている。
ココは何時か恋矢と敦が殴り合う日が来るのではと、危惧するばかりだ。
「それにしても、恋矢は随分遠出したんだね?
七つ先の駅まで移動したとか、ちょっと予想外だった」
現在、恋矢達は、電車で移動する最中にあった。
どうせ民間人のココが調査した所で、埋葬月人の足取りは追える筈もない。
そう確信するが故に、恋矢は正直に磯部邸がある場所にココを案内したのだ。
その間に交わされた会話は、こんな感じである。
「もしかして恋矢、ご近所では買うのが恥しいちょっとエッチなゲームを買いに行った?」
「………」
いや、ココさん。
この世には〝エッチなゲーム〟か〝エッチではないゲーム〟かの二通りしかない。
〝ちょっとエッチなゲーム〟など、存在しないんだ。
墓穴を掘る事になるのでそう語る事はないが、恋矢は密かに達観する。
恋矢は冷静に、首を横に振った。
「まさか。
そんな訳がないだろう。
昨日は月さえ出ていない涼しい夜だったから、つい遠出しただけ。
只の気分転換さ」
「はぁ。
それは何か、嘘っぽいね。
だって恋矢、頬を赤く染めながらそっぽを向いて喋っていないし」
「――世間話をするだけで、そんな反応を見せる男など居ない!
ココはいい加減、俺をヒロイン扱いするのは止めろ!」
「えー」
「………」
凄く嫌そうな顔で、ココは不満げな声を上げる。
恋矢としては、顔をしかめるだけだ。
「何で恋矢は、男子なのかなー?
私としては、絶対女子の方が似合うと思うんだけど。
敦ちゃんに頼んで、恋矢の例のモノを引き千切ってもらおうか――?」
「――怖い、怖い、怖い!
なんで彼女という立場にある人間が、そんな願望を抱くっ?
お前は俺を、どうしたいんだ――っ?」
その答えは無論〝魔改造〟だろう。
篠塚ココが全知全能になれば、その時点で天井恋矢は男子としての立場を失う。
そう確信するが為に、天井恋矢は心底から恐怖した。
「しかも自分の手は汚そうとしないから、質が悪い!
加賀に頼むな!
やるならせめて、自分でやれ!」
「……えー。
私が恋矢の例のモノを、素手で引き千切るの?
それって、色んな意味で痛すぎない?」
「誰がやっても、痛いわ!
それはもう不思議ちゃんを超越した、狂気の沙汰だよ!」
後、女子が気安く〝例のモノ〟とか言うな。
さっきから本当に、気安く下ネタを口にしすぎですよ?
「そうね。
私がそんな人間だと思われるのは、遺憾だわ。
下ネタ禁止。
下ネタはもう止める」
「………」
ロボみたいな口調で、ココは語る。
これも反省と言えるのだろうかと恋矢が思っていると、ココは首を傾げた。
「と、そろそろ目的の駅ね。
ここに着いた後、恋矢はどうしたの?」
「……ん?
ああ。
適当にその辺りを、散歩したんだけど……」
「じゃあ――先ずは昨夜の恋矢の足取りを辿りましょう」
と、今後の方針を定めたココは、駅に着いてから早速恋矢に案内を頼む。
恋矢は内心溜息をつきながら――ココを連れて磯部邸に向かった。
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