第5話 初めまして
会う日を決めて
入念にオシャレをした。
高校?忘れてたよ。
だって母親から何も連絡ないし。
鼻歌は倖田來未のyou
化粧もバッチリして
髪の毛も染め直した。
少しでも好かれたくて。
出来ることなら
抱きしめられたくて。
「キンチョーなんていつぶりだろ」
じわじわと迫り行く時計の針が怖い。
怖い、怖い。
けど、逢いたい。
「行きますか…」
重い腰を上げて
最後のメイクとヘアチェック。
うん、大丈夫だと思う。
待ち合わせは
人気のない公園だった。
ドキドキが口から出そう。
あー!もう!ニヤニヤするな!
その時だった。
トントン
「空だよ!」
なんだろう
私には無い、陽の光が見えた。
でも時に見え隠れする辛そうな顔を
私は見逃さなかった。
「初めまして…」
「可愛いー、実物可愛いー!」
「って俺、未成年だから健全ですっ!」
「何それ!面白いね」
「すぐ手出されると思ったら大間違い!」
なんだろう
こんな話、したことないや。
今までの私には
存在すらないような人間で
鮮やか、艶やかに見えた。
2人で歩いて辿り着いたのは
隠れ家のような場所だった。
「俺のお気に入りなんだよねー♪」
どうやら穴場というのを見つけたらしい。
1人でたまに来るという。
人気の無いところだから、誰も来ないそうだ。
「ココア飲む?」
自販機で買ってきただろう
ちょっと冷えたココアを頬に当てられた。
「ありがとう…」
「俺はさ、知りたいんだよ。
君の事全部。
引いたりしないからさ。」
興味津々のようで
目は光っていない
闇に堕ちた目をしていた。
「美玖ちゃん、偉いね」
その言葉に私は
とんでもない涙を流した。
そういえば
私、生きるために必死で
頑張っていて
身体を売って、生計立てて
なんとなく、生きてた。
「汚いでしょ?」
「汚いって何?」
あぁ…ごめんなさい
私は汚いんです。
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