「ザンキ」と「ザンギ」

かわごえともぞう

第1話 居酒屋「スター」

 センザンキは、愛媛県の郷土料理です。今治の人は略して「ザンキ」と称します。他方、北海道にもザンギがあります。これも北海道の郷土料理です。『キ』と『ギ』の違いです。何故、北海道と愛媛県にあるのか? 調理法もレシピも殆どが同じです。何故?

 これは75年前の話です。どうでもよい話です。暇がある人達にする話だと思います。暇がない人は訊かなく良い話です。では………、



「今晩は暇か?」

 窓の外から少しだけ開けると、山瀬隆司やませたかしが訊いてきた。此処ここ村上幸雄むらかみゆきおが勤務しているガス会社の中にある作業員の控室である。。

「おう、今日の晩は暇や」

 ドカベンと梅干しの昼飯で食べていた村上幸雄を玄米茶で口の中をそそぐとそう云った。

「分かった。7時にスターでな。訊きたい事やあるんや」

 山瀬隆司は、それだけ云うとすぐに帰って行った」


 スターという名前だが、キャバレーでもなく、バーでもない。小さな居酒屋で「せんざんき」を売りにしている。戦後に4~5年後に開店した店で、ちょうど食料難が、なんとか収まった時期だ。しかし、バラック建てで、カウンターとテーブル2脚、全部入っても15人が限界だ。老夫婦と職人の典三てんぞう、そして末娘の郁子と4人で回している。郁子いくこは評判の別嬪べっぴんさんで、掃溜はきだめめの鶴と云う処だ。

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