謎夢少女、某日ヲ聞。(第八話)

それから数日経ち、約束の日曜日になった。


図書館の職員から聞いた住所を頼りに元警察官の家へと向かった。


私の家から歩いて30分ほどのところにその家はあった。


建ててからの年月がかなり経ったせいか、家の周りに蔓(つる)が大量に絡まっていたり、外壁は木目が溝となってボコボコしていた。


握ったドアノブがガタガタしていたりと、入る前からかなり怪しげな雰囲気を醸し出した。


本当にここであっているのだろうか。


疑問に思ったがドアをノックし


「あの〜すいません。今日の14:00にお邪魔する予定だった茜です。いらっしゃいますか?」


そう言うとドアの奥から何か物音がした。


そしてドアが開き、元警察官の男性は家の中へと入れてくれた。


「ここに座んなさいな。」


そう言って、私は炬燵(こたつ)に座った。


「ちょっと、お茶の準備をするから、待ってなさい。」


そう言われた私は返事をし、炬燵の周りにあったものを見回した。


3つ引き出しがあるタンスの上には写真が6〜7枚ほど飾っていた。


その中のほとんどは家族の写真や、おそらく釣りが趣味だったのだろうか、魚の写真が飾ってあった。


しかし、1枚だけ他の写真とは雰囲気が異なる写真があった。


新聞の一部であった。


お茶を持ってきたタイミングで


「あの新聞はなんですか?」


と聞いてみた。


すると、


「これから君が私に聞こうとしていることだよ。」


私はもう一度その新聞を見てみた。


図書館で見た新聞の切れ端と同じものだった。


「まだ、私の名前を言ってなかったな。失礼失礼。私は田中権三という。」


「田中さんですか。よろしくお願いします。」


「それで?君はあの事件について聞きたいのかね?」


「ええ、実は、、」


図書館の職員に話した同様、田中さんにも今日までの一連を話した。


「そうか、それはご苦労だったな。しかし奇妙だな、その夢で当時の体験をしたというのが。」


田中さんはそれに続くように、当時警察官だった頃の体験を私に聞かせてくれた。


「この事を人に話すのはもしかしたら君が初めかもしれない。というのも、もしかしたらあの図書館にいた人から聞いたかもしれないが、例の一件はタブーとして今日まで扱われてきたんだ。あれは、、今から大体50年程前の事なんだが、当時私は交番勤務をしておってな。君も知っている通り、この町はあまり事件そのものが起きないんだ。だから、交番勤務とは言えど基本は皆暇人同然だった。"給料泥棒だ"って近所の住民から言われたこともあったよ。けどそんなことは気に止めてなかったんだ。なんだかんだで交番勤務を始めて8年くらいが経った頃かな、。珍しく交番に1本の電話がかかってきたんだ。『古民家の中から異臭がするんです。』と。変な電話だなって最初は思ったよ。揶揄われてるのかって思ったけど、行かないわけにはいかなかったんだ。私は同僚と2人で教えられた古民家へと向かったんだ。着いた時、確かに異臭がした。なにか、こう、生臭いような。私は古民家のドアを叩いたのだが誰も返事をしなかった。ドアノブを捻ると、鍵がかかってなかったんだ。だから私と同僚は中に入った。一階には怪しいものなんかなくて、よく見るような景色だった。だが、問題は2階にあった。階段を登ると外に漏れていた異臭が一気に鼻に入った。どんどん強烈になっていく異臭を我慢しながら2階のドアを開けた。その部屋の真ん中に大きい棺桶が一つ置いてあったんだ。それを開けて、私は腰を抜いた。血だらけの少女が収まっていたんだ、棺桶に。とても無様な姿だった。私は急いで警察署へ連絡をした。40分ほどしてパトカーと救急車が何台もやってきた。古民家はブルーシートで囲まれ、隠され、私たち交番勤務は中に入れさせてはもらえなかったが、何やら棺桶に入っていた少女を救急車の中へと入れたのを見た。それから警察はそれを殺人事件と断定し捜査を進めた。しかしどれだけ捜査しても証拠が見つからなかったのだ。やがて事項が過ぎ、捜査は打ち切りになったんだ。」


「そうなんですか。」


私は生々しい話に胸がドロドロした。


「だが、話はここからだ。本当に恐ろしいのは、ここからなんだ。」


「え、?」


私は耳を疑った。

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