浮浪少女、夜更ヲ迎。

放浪を始めてから6時間程経った。


私は小学生の頃から散歩をするのが大好きな女の子だった。


普通自転車を使わずに友達の家に行ったり、電車を使っていくところを歩いて行ったり、交通手段は第一に歩きというほどだった。


そのため6時間歩くということは私にとって想像するほど大変なことではなかった。


しかし、私が歩いていたのは気づいたら山のような草木が生い茂る場所だった。


そこは大抵坂道だった。


その影響のせいか、ここ最近運動不足だったせいか、徐々に徐々に体力に限界がきていた。


さっきまでの明るさが嘘の様に消えていき、辺りは黒く染まっていった。


私の高校は静岡にあるのだが、都会寄りの高校ではまったく無かった。


周りには草木が生い茂る、まるで森の中の学校だ。


そのせいか生徒はこの高校を「森高」と呼んでいた。


そのような環境の中での夜は余計に自分の恐怖心を駆り立てた。


道路は進むにつれてガタガタになり、街灯すら無くなっていった。


何度か引き返そうと考えたが、複雑な道を無意識で歩いたせいか戻ろうにも戻れない半分迷子状態になっていた。


唯一この暗闇を抜ける方法、それこそ「歩く」ことだった。


しかし時間は止まってはくれない。


完全な夜となり、安全に歩くことすら危うくなってしまった。


私は仕方なく唯一の連絡手段であるスマートフォンのライトをつけて歩くことにした。


そこから1時間程歩き、スマートフォンは表示した時刻は0:00を回っていた。


バッテリーの着々と減っていく中、遠くに明るい何かを発見した。


私は最後の力を振り絞り、その明るみに向かって走った。


私の前に現れたのはコンビニだった。


初めてコンビニという存在に感動した。


すぐさま店内へ駆け寄り、ポケットの中に入っていた財布を取り出した。


残金は3,512円。


効率よく使っていかないと餓死してしまうと考えたものの、私の体力と空腹は限界に達していた。


鮭のおにぎりとサンドイッチ、2Lの水、懐中電灯、あと気持ちでアイマスクも買った。


値段は合計1154円だったが全く損に感じなかった。


残りの残金は2,358円となった。


コンビニを出ておにぎりとサンドイッチを行儀なんぞ関係なく貪りついた。


時刻は1:30。


私に今までにないほどの睡魔がやってきた。


アイマスクは持っていても寝袋を持っていないせいで防寒対策の「ぼ」の字もない。


しかし寝たい。 寝たい。


ただ野宿できない理由があった。


それは熊の影響だ。


ここ最近辺りでは熊による被害が多かったそう。


過去に野宿して熊に襲われ死亡した事件もあったらしい。


そこで私はある計画を練り立てた。


このコンビニの裏に古い古民家があったのを発見したのだ。


古民家には灯りがついているため一見入れそうにもなかった。


しかし、屋根のところに人が入れるぐらいの穴があった。


私は古民家を静かによじ登り始めた。


いかにも踏み外したら壊れそうなほどの家だったがそんなことは考えもすらしなかった。


頭の中は安全で寝ることだけでいっぱいだった。


ギシギシいう壁をバレないように慎重に登った。


そして、とうとう登りきろうとしたその時、


「バガンッッッッッッッ!!!」


足をかけていた壁の一部が割れ、私は地面に叩きつけられた。


その瞬間、古民家のドアが開く音が聞こえた。

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