浮浪少女、鉄柵ヲ飛越。
ましまろのきもち
浮浪少女、学場ヲ離。(第一話)
[第一章]
"自由"ってなんだろう。
その答えを探す為に私は旅に出た。
「行くあてはないけど ここには居たくない」
ヘッドホンから爆音で私の耳に流れるBlankey Jet Cityがまるで私の真髄をついたかのように感じた。
教室の椅子に座って、誰からも理解されない音楽をただ一人で聴く。
世間的には苦である行為かもしれないが、私の場合そう感じたことは一切なかった。
別に友達が居ないというわけでもない。
ある一定数の友達は常時いた為、学校生活に困ることはほぼないに近かった。
だけど、私の心は満たされない。
何故かって?私もわからない。
けど空洞(うつろ)な感情がそこにはあった。
それを満たしてくれる存在こそ音楽だった。
言うならば、唯一寄り添ってくれる友達である。
「茜さん!!」
そう叫んだのは担任の田中だった。
どうやら今日一日中寝ていたらしい。
「茜さん、このままいくと大学に入れるかすらあやしいわよ。入れたとしても、その先とても苦労すると思う。じゃあこれからどうしていけばいいと思う?」
知るか。そんなこと。
だいたい大学に行くなんて誰が言ったよ。
私にとって勉強なんて他人と自分を測る物差し同然で、わざわざ強制されてでも勉強をする気持ちにはなれなかった。
高三の私の周りにはまるっきり私と真逆の人で溢れかえっていた。
なんでそんなに勉強一筋になれるか私にはさっぱりわからないし、わかりたくもなかった。
決断に至ったのはそれから三日ほど経った日の三限が終わった後だった。
理由という理由はないもののなんとなく抜け出したい気分だった。
私は周りの視線を見計らって校庭へと飛び出した。
そして学校を囲う鳥籠の様な金網を昆虫のようによじ登り外に出た。
ほんの一瞬だったが、鳥になれた気がした。
さて、出たはいいものの行くあてもなければ金も人望もない。
かといって学校には戻れない。
しっかりと準備をしていけばよかったと放浪生活最初の後悔をここで体験した。
とりあえず学校の前にある道路に沿って歩いてみることにした。
500mほど歩いたところに人影のないレコードショップがあった。
しかし、私はレコードに目がない。
というのも読者諸君はもう気づいていると思うが、私は重度の音楽中毒だ。
日頃から暇さえあれば音楽を聴いていた。
暇さえあれば勉強しろ!とどこかのカリスマ予備校教師が言っていたが、そのパワーワードが私にとってパワーワードとなることは一度たりともなかった。
それ以上にレコードの中でボーカルが叫ぶ詩の方が力強く、生き甲斐と言ってもおかしくない程であった。(今現在でも)
気づいた時には入店してぼーっとレコードを眺めていた。
レコードが敷き詰められた箱の中から適当に引っこ抜き、ジャケットを三十秒ほど眺めたらしまう。
そしてまた引っこ抜いてはしまう。
店側からしたらまったくいい迷惑である。
店にはThe Smithsのファーストアルバムがかかっていた。
いまだにモリッシーの声には慣れないままだ。
私は一度The Smithsを好きになりたいと思い、一ヶ月ほど聴きまくっていた時期があった。
しかし、好きになることは無かった。
そのお陰様か、一ヶ月を過ぎてから一回もかけず、手にもすら取っていない。
今頃ホコリと他のレコードに埋もれているのだろう。
かれこれ1時間程経ち、店から出てまた道路を歩くことにした。
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