第一章・延命の幸(こう)か、永遠の氷(ひょう)か。

第2話 "1人は皆(しゃかい)のために"

 ガタンと少しだけ大きく浮く振動と共に、僕は目を開ける。ブロロロと重圧感のあるエンジンの音と共に揺れる体。僕は自分の頭を、隣に座るマリーの肩に預けていたようだ。緑色のクッションが張られた座席は少し座り心地が悪く、破れて中のスポンジが剥き出している。


「……ッ」


 足が痺れてしまったのが分かって、動かすのが怖い。窓の外は景色がゆっくりとスライドされる。いつの間にか荒野から、草原に変わっていた。


「おはよう、ミント」


「え、あぁ、おはよう……」


 窓を見ると、遠くから日が少し顔を出す。隙間から朝露の爽やかな香りが漂い、心なしか身体が軽くなるように感じる。しかし、変な体勢で眠っていたせいか、腰から足にかけて痺れが起きていた。運動不足の所以だ。


「よいこのあっさーだ!!」


「声でかいよ……あたた……」


 突然窓の外に顔を出して声を上げるマリーを制しようとすると、周囲の視線を感じ、ゾッとする。突然、僕の頭に温かいものが乗った。そのマリーの手が、僕の頭上を撫でていた。僕の顔を見て瞬時に察したのだろうか。僕は恥ずかしくなって、その手を払うように首を振る。痺れた足はしばらくして、正常に血が行き渡っていくのを感じて、痛みが生じる。完全に痺れが引くと、周囲に障害物がないか気にして、その足を軽く上げてみる。


「もう直ぐつくから、そこでご飯食べよ。知らない料理いっぱいかもよ」


「食べられるものなら……」


 僕は足を小さく踵で回しながらそう言った。


「もしかして偏食なの?」


「う、うん」


「ダメだよ、たくさん食べなきゃ。ケーキとかアイスとか唐揚げとか」


「お菓子はダメだと思う……」


「プリンが良かった?」


「なんでデザート……?」


「ほら、見えてきた! あの町!」


 デザートの意図が気になるけど、聞かないでおこう。窓を開けて乗り出すマリーの懐から外を見る。


「あれがコロニスだよ」


 マリーが指差すそこは、機械盤や鉄などがない、木材の家や大きな建物などが赤や茶色などを彩る町。どこからかアコーディオンの音色がひんやりとした風とともに流れてくる。バケツを持つ白いエプロンを纏うふくよかな淑女たちが掃除しながら談笑する。子供はご飯をあげてはしゃぎ、それに呼応する犬も心なしか笑顔だった。


 この町のバス停に着いた僕は、二人分の支払いを済ませると、バスが僕たちを後にして遠くへ去っていくのを見守った。


「あ、料金、ちゃんと払えてたかな……。足りなかったら捕まっちゃう……」


「だいじょーぶ、四千八百二十ファニーぴったしだったよ」


 バスに乗る時、ターミナルでATMを使って引き出した。残り、多分、クレジット五百万ファニー。親が残してくれた遺産ではあるけど、正直死ぬまで足りるか不安だ。マリーもそれなりに持ってるらしいけど、いくらなんだろうか。


「それなら、いいけど……。じゃあ、ご飯食べなきゃね」


「ミント、その前にやることあるでしょ?」


「なんかあるっけ?」


「"セーブポイント"確保!」


 マリーからこの現実で全く聞き馴染みのない言葉を言われて困惑したが、僕は直ぐにそれを理解した。


「……もしかして、"宿"のこと?」


「そうとも言う」


「俗語分かんないよ……」


 マリーの提案の元、僕は町の人から宿の情報を得ることにした。でも、割と直ぐに宿屋の場所が分かる看板を見つけ、すぐさまその地図の通りに辿った。


「お〜」


「豪華ってほどじゃないけど、結構大きいね」


 敷地的にも、町の六分の一を占めるほどには大きい。宿屋と呼ばれる建物の近くには、牛が何頭か小屋で繋がれていて、干し草を食べていた。だからだろうか、濃厚なミルクとこんがりとしたパンのような香りが漂ってくる。素朴だけど安心感を抱かせる茶系統の色彩が僕は好きであるのだ。

 宿屋の中に入ると、ちょうどカウンターが空いていた。受付の男性に渡された受付欄に名前を書き込み、二週間の滞在を申し込むと、二人分の部屋の鍵を差し出された。僕の鍵は"206"と掘られている。


 その後、荷物を置いた僕たちは宿屋の酒場でモーニングサービスをやっていたので、そこで朝食を取ることにした。


「んまっ、うんまっっ!!!」


「よかったね……」


「牛さん豚さん見た後の朝食は命を感じさせますな!」


「夢に出てきそう……」


 シンプルなバタートースト、ハムとベーコン、そしてシャッキリとしたレタスとブロックチーズ。そして、搾りたてのミルク。朝食は申し分ないが、マリーが食べ進める一方、僕の食が進まない。肉を見ると、血抜きされて加工される過程を想像して、唐突に町の惨事を思い出される。胸の奥が、隙間なく不快なものが敷き詰められていくような……。


「ミント、無理しなくて良いんだよ?」


「え?」


「私は神の使いだから、勇者の体調と気分を把握しなきゃ。思ったことはちゃんと口に出してね」


「……うん」


 そう、あの日のこと。僕の故郷である町が魔物に襲われて、住民がほぼ全滅したこと。目の前で、ソレルという友人を惨殺されたこと。それに加えて、マリーの出会いと僕の魔法。町にもどろうとも考えたが、死体があるかもしれないという想像から目に入れたくなくて拒絶したのだ。一日で一気に事が起きすぎてて、その上旅を始めたからその疲弊が取れずにいた。


「なんで、僕は……生きてるの?」


「……」


「……あっ」


 つい溢れた言葉に、息を呑む。


「助けてくれたんだよ。君の友達は」


「……僕は友達だと思ってる。でも、あっちは……きっと、僕を……恨……」


「なぜ生きてるのかなんて、友達が助けてくれた命だからさ。嫌いなら、どうでもいいはずだよ」


「……」


「……助けてくれたことを、嫌だって思っちゃった?」


 少しして、僕の腹が音を上げた。僕は首を横に振り、フォークとナイフを手に取る。流石に空腹は自分でも誤魔化せない。本能は"食べたい"と叫んでいる。


「早く食べよ」


「うん!」


 そう呟いてから、手元の食事が平らげるにはそんなに時間はかからなかったことから、相当空腹だったんだと自覚した。でも、美味しそうな見た目の割に……塩っぱい。


ーーあぁ、生きてる……。僕は、生きてる……。


 そんな感動を噛み締めた。


 空腹を満たした瞬間、胸の支えが少しだけ和らいだ。そんな時、ふと僕の視野にあるものが入った。レストランの窓の外で白いエプロンを纏う少し気品のある女性が、八百屋でトマトを手に取っている。あの姿は、メイドという類の人間。マリーは僕の視線を辿るように、同じ人物を捉えると、興奮した声で言った。


「あれ、メイドさんだ!」


「だよね?」


「本物初めて見たよ! 誰に支えてるんだろ」


 メイドといえば、使用人。使用人は豪邸かお城で身の回りのお世話をする役目だから、シンプルに王子か姫がいるんだろう。偉い人に関しても疎い僕は、普段あまり興味は持たない。でも、こうしてホンモノを目の当たりにすると、主人がどんなものか気になる。近くを通りかかった店主に、そのことを聞いてみた。


「あぁ、フェクトウェッジ邸の使用人だよ」


「フェクトウェッジ?」


「お客さん、知らないのかい? この町じゃアイビーお嬢様の使用人って事で有名なんだけど、もしかして旅人?」


「まぁ、そんなとこです。ノドンスから」


「へぇ、同じ国とはいえ結構遠くからきたな。あのメイド長なんだけどさ、仕事は完璧だがなんかとっかかりづらいし、あんま愛想ないし。よくいう完璧人間ってやつだ」


「え、メイド長なんですか!? すご……」


 ちょうど、その顔が見えたが、まるであらゆる事に興味を示さなそうな表情をしている。買い物を済ませたのか、どこにも目をくれず、すぐその場を去っていった。


「いや感じ悪……」


「なんで? クールでかっこいいじゃん!」


「かっこいいって、男が使う言葉じゃないの?」


「女の子もかっこいいものはかっこいいよ!」


「可愛いって言われる方が嬉しいとは思うけど……」


「男子も可愛いって言われたら嬉しいでしょ?」


「えっ……うん、まぁ……そう、だね」


「それに、雰囲気だけで悪く言うのは失礼だよ」


「ご、ごめん……」


 そんなやりとりをしていると、いつの間にか外が人の声で騒がしくなっていた。しかし、それは朝の賑やかさとは違い、困惑の声色のようだった。その後すぐに、男の悲鳴に似た声が聞こえた。


「ごめんなさい、お金置いときます!」


「あ、ミント!」


 僕は袋の硬貨をテーブルに投げるように置き、急いで扉を開けて外に出た。


「!!」


 一番先に目に入ったのは、右足がぶくぶくに膨れ溶けていく男性。近くで泣き叫ぶ主婦に襲いかかるのは、スライム状の太い蔦のようなツイスト形状を模る魔物。スライムの中の大きな眼球が、瞼なくても主婦を睨みつけているのがわかった。周囲の住民も町を守る兵士も囲っているが、狼狽えているようだった。しかしそれらもすぐにスライムに圧倒されてしまう。一人は右手を、一人は心臓部を。


「なんで魔物が……!?」


 いや、僕の故郷が襲われたのだから、この街も例外じゃないのは分かりきったこと。即座に鉛筆を取り出して万年筆に変化させる。それを使って、この前の戦闘を思い出すように、魔物を斬るように横線を引いた。しかし、スライムが真っ二つになった瞬間、その二つが分裂するように破損箇所を即座にそれぞれ足と頭が生えてきた。


「再生した!?」


 すると、二体になった魔物は、こちらにターゲットを変えてきた。一体がこちらに唾液を吐き出してきた。僕は咄嗟にそれを避けたが、その唾液が当たったエントランスの床がマグマのように溶け始めた。その飛び散った水滴が僕の裾につくと、雫の形の穴が空いた。魔物はこちらを待つ事なく怒涛の攻撃を繰り返す。避け続けたが、住居の壁に追い詰められた僕に、魔物はジリジリと距離を詰める。


「雪像になるか遺影になるか、選びなさい」


 突然聞こえた少女の声と同時に、急に空気の温度が急降下する。どこからか雪の結晶が飛んできたかと思いきや、目の前にいた魔物が氷付けにされて、砕けて豆よりも小さなカケラとなった。


「これは……!?」


 上から人の気配を感じた僕は、住居の屋根の上に目をやるとそこにはフードを被った少女が、豪華な扇子を広げて仰いでいた。


「そこのお兄さん! 大丈夫!? 怪我してるけど!」


「え、僕? 怪我はしてないけど……あっ?」


 さっき破れた裾の部分の腕から血が流れていた。


「手が、手が!!」


 さっきの液体が皮膚に当たったのだろうか。傷口は血溜まりで噴き出す。まさか、このまま神経から骨の髄まで砕かれるのだろうか。血が抜かれていってるのか、段々と眩暈がしてきた。


「あぅ……手が、溶ける……!!」


 突然上から飛んできたフードの子供に手を握られた。


「待ってて、今治療するから!」


「治療ってどうやって……」


 少女は豪華な扇子の先端を僕の腕に充てると、流れた血が傷口に吸い込まれていき、傷口の中のスライムと思われる液体が飛び出て、キラキラと輝きながら宙に消えた。みるみると傷口が塞がり、氷漬けになる。しかし、氷はただ冷たいわけではなく、心地よく傷を包み込むしっとりとしたガーゼのようだった。しかも、氷は傷口に直接当たらないように小さく囲みながら防いでいるので、皮膚と細胞が死ぬこともない。


「これで大丈夫! 溶けるまで触っちゃダメよ」


「あ、ありがとう……でも君は……」


 そのフードの少女は突然息を呑んだと思ったら、僕を置いて建物の隙間の方に駆け込んで去っていく。その後、僕の道筋の方からマリーが駆けつけてきた。

 マリーは破片となり崩れた魔物を見て、驚きの声を上げる。バッと僕の手を握って目を輝かせた。


「勇者ミント、もしかして新しい魔法覚えたの!?」


「ち、違うよ。たまたま通りかかった人が助けてくれて……」


「もしかして、フード被ってた?」


「何で知ってるの?」


「さっき道で倒れてた男の人の足を魔法で治してたんだ。その子の扇子から投げてきた光が一瞬で」


「そうだったんだ……」


 その後、反対側からさっきのメイドが出てきて、僕に駆け寄るなり尋ねられる。


「申し訳ありません、ここにお嬢様を見かけませんでしたか」


「お嬢様?」


 メイドはメガネを整えて真顔でこちらを凝視すると、納得するように瞬く。


「あぁ、旅人ですか。特徴といたしましては、赤い髪の毛のいかにもお転婆なか弱い少女なのですが」


「いや、見てないけど……」


「そうですか、失礼いたしました」


 メイドは短い言葉だけを交わしてその場を去っていった。


「さっきのメイドさんに直で話しちゃったね」


「話してたかなぁ?」


 僕はその子供が走っていった方向を、ただ呆然と眺めた。そこに、ピンク色の線状に光るものが落ちていた。それは綺麗に結ばれた小さなリボンで、それを手に取った。


「これって、もしかしてあのフードの子の? すごく繊細なリボンだね!」


「うん、これ届けないと……、でもあの子一体誰なんだろ」


 そうして、このリボンの持ち主を手がかりゼロから探す事にした。さっきの大騒ぎの後だから、さっきの大通りには大勢の人が集まっている。ほとんどは怪我人だが、そのフードの子供に治してもらったということで、全員安静にしている。無傷の人は安全のためにその大通りに留まってもらってるらしい。情報収集にはもってこいだった。とりあえず片端から聞いてみるが、皆フードの子供は一瞬しか見ていなかったとのことで、目立った手がかりを見つけるのに苦労したが、とある羊人の淑女の証言が有力となった。


「この布地、結構高価なもの使ってるわね」


「知ってるんですか?」


「うち呉服屋やってるんだけど、このきめ細かな繊維作れる素材って本当に希少なのよ。相当お金持ちじゃないと、手に入らないわ」


 羊人の淑女は自分の曲がりくねった角を掻きながらそう言った。


「お金持ち……。この辺でお金持ちの人って誰ですか?」


「そりゃもちろんフェクトウェッジ邸しかないでしょ? でも、リボンつけてる人って言ったら、アイビーお嬢様じゃない? 外に出てくるところなんて見たことないけれど」


「え、でも、フェクトウェッジ邸のメイドさんがそのお嬢様を探してたはず……」


「……試す価値はありそう。勇者ミント、どう致す」


「うん、ちょっと行ってみようか。重ね重ねすみません、そのフェクトウェッジ邸ってどこにありますか?」


「あっちだよ」


 その淑女の話によると、町の奥に行くと白くて大きな屋敷がある。今いる場所からでも見えると。その淑女の指さす方向には、敷地の高い、白い建物が見えた。宿よりもはるかに広さと高さを誇っている。


「わかりました、行ってみます」


「えぇ、アスクレピオス様のご加護が在らんことを……」


 そのアスクレピオスが僕の故郷滅ぼしたかもしれないけど。



「いや、お城じゃん……」


 早速その屋敷の前まで来ると、さっきとは見た以上に威圧感と壮大感のある白い屋敷だと再認識した。そして、前には門番らしき甲冑のものが2人。初手で迷子が知らない家にしょうがなく勝手に入って行く時に言う挨拶をする。


「こ、こんにちは……」


 僕の声が聞こえないのか、門番はこちらに見向きもしない。引き下がろうとすると、マリーが声を上げる。


「たのもー!! この屋敷の頭取に面をお貸してもらいにまいりまったん!!」


「何言ってんの???」


 素で突拍子のないツッコミを入れてしまった。門番は困惑するようにお互い顔を合わせるが、その門の向こうに立派な服を着た少し老けた男がこちらを睨んでいた。


「なんだね君たちは」


 なんか鼻につくような声で、こちらに問われた。門が開くと、こちらにゆっくりと歩いてきた。


「すみません、このリボ……あっ」


 最後まで言う前に、僕の手からリボンを奪い取られる。


「これは私の娘のものだ。なぜ貴様が持っている」


 もしかして、僕泥棒だと思われてる? その証拠に、"君"から"貴様"に変わっているのがわかる。そう察した僕は、素直に弁明の言葉を並べる。


「いや、これさっき路地裏で見つけて……」


「娘はずっと家の中にいるんだ。外に出るわけもないのに、落とすわけがないだろ」


「だから本当に……!」


「これを盗るには、敷地に侵入するしかあるまい。じゃないと話にならん」


 威圧のせいで、僕の鼓動が激しくなり、言葉が出なくなる。するとマリーがこう言った。


「話にならないのどっちよ。大金持ちという割には、ケチっぽいよね! 金の亡者かしらん!」


 この状況で煽り始めたマリーに、僕は心臓をドクりと破裂される。


「ちょ、マリー、何言ってんの!?」


「さっきお宅のメイドさんに会ったけど、そのお嬢様を探されてたのは、外に出られてたからなんじゃないの??」


 僕の止める声も聞かずに言葉を続けるマリーから、主人の方に顔を戻すと予想以上にマリーを睨んでいた。


「さっきから意味わからんことを……」


「出てくるなり態度が乱暴なのどうかと思うし、そんなの当たり屋だってこと自己紹介してるようなものでしょー? 娘さんを探させるようにメイドに命じたんじゃないの?」


「マリー、その辺にして……!」


「それに、今外で何が起きてるか分かってる? 人がスライムに溶かされかけたんだよ?」


 普段のマリーと違って、こんなに雰囲気が違うのは想像しなかった。でも、確かにソレルを埋葬する時もこんなドライだった気もする。顔を真っ赤に染めた男は、門番にこう言った。


「おい、コイツらを牢屋に入れろ」


「都合悪くなったら独房? 相当中身のない奴だよね」


 もうこちらの声を聞き入れる様子もない主人は門番に繰り返す。


「聞こえなかったのか? 牢屋に入れろ」


「いや、ですが……!」


「構うな!」


 その男の指示によって、僕とマリーは門番に槍の矛先を向けられる。


「な、なんで!?」


「悪く思うなよ……ご主人様の命令なのだからな……」


 そうして、僕たちはされるがままに、門番に連行されてしまった。


とある少年と女子生徒の口論

「8時に集合って言ったじゃん!!」


「は? 言われてないわけないでしょ? 帰る前にクラスみんなで……」


「無視なんかしてないし! あんたが話聞いてないだけじゃん!」


「先生! ⬛︎⬛︎がやる気ありません!!」


「⬛︎⬛︎、お前宿題も忘れたよな?」


「やったのに失くした? 嘘言うなよ。前もそうだったろ」


「人のせいにすんなよ。廊下で正座してろ」


「聞こえないのか? 正座しろって言ってんだよ!!」


「泣けば許されると思うな!!」


「もういいよ。ほら、練習始めよ!」


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