第8話(1/2)突然ですが、ボランティア活動に励みます!

 全ての部活動、同好会は一年に二回。行ってきた活動をまとめた活動報告書を提出する必要がある。前期後期の期末試験のシーズンがちょうど提出時期にあたる。そのため、新・ボランティア同好会も前期の間に何かしら目玉となる活動をしなけばならない。


突然だが、今日はその活動の決行日。休日であるが、聡平そうへい、田中、茸木なばきの三人はりんにいつもの部室へ来るよう指示を受けていた。


 三人が部室に入ると、もうすでに凜が居た。


「遅い。これから町内の催し物に参加する。さっさと楽器持って、ここから出るぞ」


 凛は聡平に自身が使う機材が入ったバッグを渡す。マイクとミキサー、ケーブル類などが入っていて結構重い鞄だ。


「凜くん! 全く分からないけど、そこでライブをするってことだね」

「え! まだ僕たちワンコーラスしか練習してなくない? しかもあの一曲だけ」

「いっつも中堂先輩は突然だ…………」


 聡平、田中、茸木なばきはそれぞれが凜へ問いかけるが、彼はその全てに対して答えることもなく教室から出ていく。扉が閉まる音が教室にせつなく鳴り響く。


「と、とりあえず、指示通り機材を持ち出そうか。二人とも、持てなかったら俺に言ってね」


 残された三人は急いで出発の準備に取り掛かる。





 校門に三人が着くと、そこには凜が居た。


「ついてこい」


 凜はそれだけ言うと、スタスタと歩いていく。その後ろをとてつもない大荷物の聡平と中くらいの荷物の田中とギターケースを背負った茸木なばきが歩く。


「志之くん、その荷物大丈夫なの?」

「オレも持とうか……いや流石に」

「全然大丈夫。俺、こう見えて力持ちなんだよね」


 聡平は自身の楽器。ベースやギターやキーボードの他にもアンプやスピーカ―などの機材に加え、凜に荷物を背負い、両手に持っている。歩荷とまでは言わないが、信じられないほどの荷物を背負っている。


彼は二人の心配を気にする素振りはなく、凜に追いつきたいのか歩くスピードを上げる。


「……おい、志之。その荷物はなんなんだ。行くのは商店街だぞ、山じゃねぇんだ」

「分かってるって! ライブすんでしょ。これぐらい機材ないと……」

「馬鹿か。流石にスピーカーやアンプぐらいは向こうにもあるだろ。それにお前そんな楽器持ってっても腕が二本しかないだろ」


 流石に凜もギャグマンガみたいな見た目の聡平に動揺を見せた。その少し後ろで田中と茸木はこそこそと話している。

 

「いや、あれ力持ちとかいう次元じゃないよね。何か特殊な訓練を受けてるよね!」

「カッコイイよ志之しの、スーパーヒーローみたいだ。でも……いいのあれ、現代ドラマの登場人物じゃないでしょ……」

「しれっとしたメタ発言!」


 四人が学校を囲うフェンスに沿うように歩道を歩いていると、ほどなくして煌びやかではないが、華やかで力強さを感じるアーチ看板が見えてくる。『鈴が元商店街』と掲げられた看板の下を潜り、凜に連れられるようにして、他の三人もずんずんと目的の場所まで突き進んでいく。


すると顔を見せたのは小さな催事スペース。ブルーシートといくつかのパイプ椅子がぽつり。手狭な小上がりのステージを眺める女性が一人。


「日名菊学園高等部。新・ボランティア同好会です。今日はよろしくお願いします」


 凛は何の前触れもなく、きっちりとした挨拶を口にすると、女性へお辞儀をする。それを見た他の三人も慌てて「よろしくお願いします」と頭を下げる。


「あらー、可笑しな名前の部活さんだから、誰かと思ったら凜君じゃないのー。こちらこそ今日はよろしくお願いしますね」


 そう言い頭を下げた女性は顔を上げると、穏やかで優し気な笑みを浮かべる。


「はい! 一昨年はどうもありがとうございました。今年も是非手伝わせてください」

「そうそうー。去年は顔を見なかったから心配してたのよ。でも良かった元気そうで。所で、みんなとは初めまして? だよね。私は鶴見です。随分と顔ぶれが変わっちゃって────」

「鶴見さん、早く準備しないと!」

「ええ、そうだったわね」


 全く状況の飲み込めない三人はとりあえず荷物を下ろすと、中途半端な状態の会場を整えることになった。パイプ椅子と長机を運び、何かが入った箱を並べていく。


「志之くん、相変わらず凄いね。どんな力があったらこの机を一人で運べるのさ」

「……そうだよ。もう志之一人で良くないですか?」


 田中と茸木なばきが二人で机を運びながら、一人で軽々大きな長机を運ぶ志之に声を掛ける。彼はそれに対してさわやかに返事をする。


凜は何をしているかというと、運びだされた椅子を並べたり、机の上に小物を置いたりと軽作業に勤しんでいる。時折女性と穏やかな声で談笑したりと楽し気だ。


「それよりさ、みんなも何一つ聞かされていないんだよね? 俺、おしとやかな凛くん見るの久しぶりすぎて、もうわけわかんないんよ」

「志之も聞いてないのか。確かに、初めて会った時の中堂先輩みたいだ……」

「先輩には聞きたいことあり過ぎるけど、とりあえず言われる通りにやるしかないみたいだね」


 それほど大きくないスペースなので、あまり時間はかからずに設営を終えた。



【お知らせ】

 前更新から二週間以上期間が開いてしまいましたが、今日から更新を再開していきます。

そろそろ「10万字間に合わねぇぞ」と凛先輩に怒られてしまいそうなので頑張ります。

よろしくお願いします。

 ちょうどカクヨムでは、本日(12月26日)から1月20日まで「積読消化キャンペーン」が実施されています。

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 大変俗っぽい話ではありますが、私もこの機会に積読を少しずつ消化しようと思います。読みたい作品がたくさんありますから。

作品更新も頑張るので、何卒「キミガネ」のフォローもよろしくお願いします。


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シンシア 


2024年12月26日

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