第7話 無謀な目標は熱狂的に
あれから、新・ボランティア同好会は数度の活動を行った。
しかし、今日の活動は少し違った。教卓の上に、不機嫌そうな様子で足を組んで、座る凜が練習を始める前に、珍しく口を開けた。
「お前らに話がある。この会の目的についてだ」
凜は低い声で言い放つ。
「このまま、仲良しこよしでバンドなんかやるつもりはない。ボクには時間もない。だから、ここで宣言する」
凛は一呼吸置く。聡平のことを見る。
「来年二月の全国高校生バンドフェス。『ムジカデラーニモ』に出場し、最優秀賞を取ることだ」
「えー!!!」
「え」
凛の宣言に
「……それって、メジャーデビューを志す高校生バンドの登竜門でしょ。無理無理無理。無茶だって。あと九か月くらいでしょ? それなら別のメン────」
「
「…………うっ」
先輩の冷たい視線が刺さる。別に頭ごなしに否定したわけじゃない。先輩は置いておいても、俺はへっぽこ作曲家で、タナショ―とタケはついこの間楽器に触り始めたたばかりの音楽未経験者だ。そんなお世辞にもバンドメンバーだなんて呼べない俺たちを引き連れて、ずっと前からこのイベントを目指してきたような強豪バンドたちと競い、一番になるなんて夢物語にも程がある。
いつもなら先輩の強い眼差しを信じることが出来るけど、紛いなりにも音楽をやっている身で「うん、一番目指して頑張ろう!」だなんて口が裂けても言えなかった。
「以上。ほら、シケタ面してねぇでさっさと練習始めるぞ。今日はボクがタケの練習を見る」
「志之くん。僕もさ、音楽をやってはなかったけど、聴くのは好きだからさ。例のコンテストがどれだけ厳しいものなのか、無謀なことなのかは分かるよ。だから、あんな言われ────」
「タナショ―! だよね、ありがとー。お陰で少しスッキリしたよ!」
「わっ! ちょっ」
それから、二人はきちんと組まれたドラムセットの前に移動した。
「練習……どうしようか。俺ドラム叩けないんだよね」
「えー!」
セット中央のドラムを叩く用の、
「まぁ、ちょっと叩いてみてください」
聡平はどの大きさの太鼓をシンバルを、どのタイミングで叩けばよいかが記されたドラム楽譜を指さす。田中は頷くと、ドラムを叩き始める。足元に置かれたペダルを踏んで
「うーん。俺とタケが必死にギターの練習してる横で、凜くんとロボ作ったり、追いかけっこしてる人だとは思えないぐらいには叩けてるのかな」
「辛辣な評価だね! 間違ってないけど!」
「ははは。冗談はさておき────」
「志之君、何でかな? 感覚的に、合わせ練習になった途端に、しっかりと叩けるようになる気がするんだよね」
「不思議だよね。今とは比べ物にならないくらい上手いもん。凜くんの歌が催眠術みたいな?」
「あー分かる。何か終わった後の疲労感すごいし、意識が若干薄いし」
「でも、練習中の記憶や体験があるから、ある程度は叩けたんだと思うよ。効果はてきめんだね」
「そうなのかなぁ」
田中はあまり納得が言っていない様子であるが、凛のことになると、眩しい笑みを浮かべる聡平に、あまり強くは出られなかった。
「志之、随分と楽しそうにおしゃべりしてるな。そんなに暇ならさっさと始めるぞ」
「……凜くん、望むと────えええ!」
俺は先輩の姿を確認するために振り返った。強気な言葉とは裏腹に、満足げな笑みを浮かべる先輩と奇抜なヴィジュアル系メイクを施されたタケの姿があった。
「おしゃべり指摘できる立場なの!」
「タスケテ」
「な、なにをどうしたらこんな状況になるわけ! 凜くん!」
即座にツッコミを入れる田中と、何故かカタコトの
「
今日の合わせ練習は、なんとなくいつもより激しい演奏になった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます