第4話
精悍で男らしい顔立ちの兵士が、マグノリアに声をかけた。
「マグノリア、国王が君を呼んでいる」
彼の名はジーニアス。
マグノリアの愛しい人。
金色の髪は中途半端に伸び乱れても輝き、彼の笑顔をより魅力的なものに見せる。
だが今は、その笑みにうっとりと見惚れている場合ではない。
マグノリアは、地面に力なく横たわる体に向かって白く光る手をかざし続けた。
「でも、この方の傷を治さなくては……」
「いや、彼は……もうダメだ」
「そんな……」
地面にへたり込むマグノリアは、ジーニアスに手を取られて次の場所を目指して走り出す。
城下であるはずの場所は、地面こそ確かにあれど、目印になるような建物は片端から破壊されて自分がどこを走っているのかもマグノリアには分からない。
戦火は激しく燃え盛り。
街を舐めて呑み込み破壊して、残り少ない陣地を囲む。
「神は我らの味方ですっ! 戦うのです! 悪魔を許してはいけませんっ!」
声だけは大きい聖者が、一番後方から叫んでいる。
人々を押しのけて進むジーニアスの後に続いて、マグノリアは必死に足を動かした。
「聖女を連れてきたっ! 開けてくれ!」
固く閉じた扉がジーニアスの声にこたえて一瞬開く。
その隙を狙って民衆が王城の中へと入ろうとして怒号が飛び交う。
マグノリアとジーニアスは王城の中へと入っていくと、取り残された人々の前で門は無常に閉じられた。
王城の中は外の喧騒とは打って変わって静かだった。
人気の少ない回廊を、ジーニアスとマグノリアは進む。
辿り着いた先は王城の地下。
今は国王の居室となった場所だった。
「あぁ、マグノリア。待っていたぞ」
「この不安を癒してちょうだい」
国王と王妃は、マグノリアに癒しを求めた。
外では人々が戦い、逃げ惑っているというのに。
この国の長たるものは、王城にこもって安全を確保していた。
そして正気を保つために、度々マグノリアを呼び出すのだ。
無様で理不尽な国王たちの姿を前にしても、マグノリアは従うより他なかった。
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