第2話

 白き光。

 それの来た道筋、力の根幹、成り立ちの意味。

 興味などないし、知ったところで意味はなし。


 マグノリアの手が白く発光する先で、老婆が苦しみの表情から安堵の表情へと変わっていく。


「さぁ、これで大丈夫よ」

「聖女さま、ありがとうございます」


 老婆は来た時とは違い、ニコニコと穏やかな表情でマグノリアの前から去っていく。


「聖女さま、急患ですっ」


 慌てて入ってきた医官に、マグノリアは穏やかな笑みを向ける。


「では、そちらを優先しましょう。皆さまは今しばらくお待ちくださいな」


 人々は信頼する聖女の言葉にうなずいた。


「これは……酷いわね」


 マグノリアは運び込まれた急患を見て眉をひそめた。


「はい。この者は運悪く森に潜んでいた魔獣に襲われたそうで」


 血まみれでベッドの上で苦しんでいる患者の右腕は、離れた場所に置かれていた。

 医官の説明にマグノリアはうなずいた。


「そうなのね。先の戦いで魔獣はかなり退治されたとはいえ、ゼロではないから……」

「ええ。人目に付きにくい場所へ潜んでいるので……それでもだいぶ減ったのですが。襲われれば日頃から鍛えている我々も無傷では済みません」


 患者を連れてきたと思われる武官が、気づかわし気な視線を苦しみにのたうつ体へ落としつつ、マグノリアに言った。

 装備は全て外されているが患者は兵士のようだ。

 つい最近、王国は魔獣による襲撃を受けていた。

 撃退はしたものの、戦いによる傷跡は王国のあちらこちらに残っている。

 復興のために働く市民を守るため、兵士たちも頑張ってはいるものの魔獣による被害は絶えず起きていた。


「この者の傷は……治りますか?」


 彼はこの患者のための思って聞いているのではない。

 残り少ない兵士をひとりでも失うのは手痛い、と思っているだけだ。

 それが分かっていても、マグノリアに選択肢はない。


「精一杯、頑張らせていただきます」


 マグノリアは患者に向かって、白く光る手を差し出した。

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