第5話

もう一度、201の扉へと視線を向ける。



何も知らなかった頃よりも、その扉が、ほんの少しだけ生活感を見せる。





「(つまり、チャラ男、遊び人、貞操観念ぐだぐだ野郎)」




洋の最も苦手なタイプだ。けれど、まあ、ほとんど帰ってこないなら関係ない。




守曰く、無断で女の子をお持ち帰りしすぎていて、挙句、割と防音がしっかりしている部屋なのに、そういう声、、、、、がうるさすぎて角部屋に移動させられた、このシェアハウスの不良らしい。




階段を降りた先、ラウンジの奥にある大きな窓から燦々と太陽の日差しが差し込む。気持ちが良い。その向こうには緑の芝が引かれた庭が広がっている。




こんなに心地よい場所、洋も早く帰りたい派だ。



通常、賃貸は2年契約だが、このシェアハウスは1年契約だ。初めての一人暮らしなので、あえて1年のところを選んだけれど、洋にとってここはすでに居心地が良くなっている。





「まあ、大学生は人生最後の夏休みっていうし、謳歌してるってことで。洋ちゃんも思う存分楽しんで」


「はい。ありがとうございます」





守が淹れてくれるコーヒーの香りに包まれながら、洋はやっぱり新生活に心が躍ってしまうのだった。

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