第4話
「そうだね。シェアハウスのわりにのんびりした良いところだよ」
守に案内されたのは202号室で、今日から洋が住むところだ。
ワンルームの個人部屋にはもともとベッドが備え付けてあり、シャワールームとトイレ、手狭だがキッチンもある。このワンルームだけでも生きていこうと思えばいける。
新しい自分の居場所に思わず頬が緩む。どきどきが胸いっぱいで詰まりそうだ。
「大丈夫そうかな?」と気遣ってくれる守に「素敵です」と返せば安心したように微笑まれる。9つ違いの彼の、大人の余裕が羨ましい。
まだ引っ越しの荷物が届いていないので手持ち無沙汰な洋に、「コーヒーでも飲もうか」と守が声をかけてくれる。
ふたりで同じ扉が続く廊下へ出る。
洋は、ふと隣の部屋の扉を見る。もっとも奥の、角部屋のそこ。
「お隣さんも学生ですか?」
洋の問いに、守が「そうだよ」と答えてから、201と示された部屋の扉を見て、少しだけ困ったように苦笑する。
「あんまり、というかほとんど帰ってきてないみたいなんだけどね」
首を傾げた洋に、守は濁すように笑みを浮かべたまま続ける。
「彼、モデルみたいにかっこいい人だから、まあ、ここに帰ってこなくても、泊まるお家はたくさんあるみたいでね、毎日即刻帰宅する僕とは大違いの、キラキラくんだよ」
あはは、と笑って流す守に、洋も小さく口端を持ち上げる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます