第3話

引っ越しやら申請やらでばたついたものの、前よりも都会に近いキャンパスに、初めての一人暮らしに、洋の心は浮き足立っていた。





「洋ちゃん落ち着いてみえるから大学4年あたりかと思ったよ」




あはは、と柔らかく笑う守に悪気はないし、洋も気にしていない。表情筋があまり仕事をしない洋は、洋なりに笑ってみせる。



果たしてそれが相手側から笑顔と認定されているかは不明だが。





「……よく言われます」


「やっぱり?僕の目にも、就活を乗り切る猛者あたりに見えたよ」





年上に見られがちなのは慣れている。



内心ではわくわくそわそわ色んな感情を抱えていても、どうしてもあまり顔に出ないタイプなのだ。



3階建てのこのシェアハウスは1階が主に共用スペースであり、2階、3階が個人の部屋になる。




部屋の階と広さによっても家賃が変動するため、社会人の守さんは比較的部屋が大きく、もっとも家賃の高い、3階の日当たり良好の部屋に住んでいる。




一方、学生の身分である私は2階の奥だ。




ふたりで階段をのぼりながら話す。先ほど1階の浴場に向かう途中だった留学生の李さんとは挨拶できたけれど、平日の昼間ということもあって人はいない。





「3階はあんまり変動ないんだけど、2階はね、今は割と空きがあるんだ。新生活で引っ越す人たちが多かったから」


「やっぱり2階は学生さんが多いんですか?」

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