第5話

無意味に歩き出し、お店の縦掛札をOPENに切り替えて店内に戻っていく店員さんに吸い込まれるようにそのバーへ行き、バーカウンターに座り、




「どゆこと……?」





泣いた。ぼろぼろと泣いた。



お酒はさして強くない。カクテル2杯呑めばハイになれる。



けれど今日だけは5杯呑んでも涙が零れるだけだった。



時間が経つに連れて人の声が増えては減ってを繰り返す店内の一番隅で、私は泣きながら呑んでいた。



疫病神扱いなのか、私の隣は、その隣まで空席になり続けていた。




「これと同じの」




そんな声がすぐ隣で聴こえてきたのは、7杯目のお酒が半分に達した頃だった。



男は私の酒を指さしながら、バーテンダーに注文する。



暖色の照明だけの空間は暗がりで、男の白い肌と淡く赤紫ぽい髪色が異様に目立った。

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