第3話
そんな私なんかとは正反対で、輝かしいスポットライトの下で数多の人を魅了し続けた人達。同じ人間だとは思えない。
「お待ちの間に珈琲かお茶飲みます?」
「あっ、だ、大丈夫です」
「はーい」
反射的に遠慮していて、乾いた喉にまた、げんなりした。
綺麗に染められた髪に元気を取り戻して、就職したらできないことを今のうちにやっておこうと前向きに笑顔をつくる。
電車を待っている間にメールが一通届き、私は何気なくそれを開いた───。
◇
電車に乗っている間も、ホームの階段を降りている間も、改札を抜ける瞬間も、家へ戻る間も、涙が落ちそうになるのを我慢していた。
〈ごめん今日家帰るのやめる〉
母親に連絡を入れ、俊介のいるふたりの家へ早足で帰る。俊介に会いたかった。顔を見て、大丈夫だよって慰めて欲しかった。
今夜ひとりで眠るのは耐えられそうになかった。
マンションの階段を駆け上がる。家の玄関扉には鍵がかかっていた。俊介らしい。ヒールを脱ぐ。私のものじゃない女物の靴があった。
ガタガタ、と向こうで物音がした。
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