第2話

SH/KIの名前をかろうじて知っていたのは親友の愛子あいこの影響だった。いつも何気なく親友に救われている。


実際は全く興味のないSH/KIというアイドルについて興味津々で聞いている姿勢を取る自分に情けなくなりつつ、美容師さんとの会話のためにスマホでSH/KIを検索までしている。



「今年10周年なんですね、私とあまり年齢変わらないのに」


「十代とかでデビューするとそうなりますもんね」


「たしかに」



スマホの画面をスクロールする。美容師さんと目を合わせるよりもこちらの方がまだ息がしやすい。



私と3つ4つしか変わらない彼らは、10代でデビューした途端に様々な音楽賞を総ナメにし、歌だけではなく俳優業やラジオ、TV番組など手広く活動している。


メンバー紹介でひとりひとりの写真と名前が並ぶ画像を眺める。みんな顔の系統は違えど端正な顔立ちに華やかさを纏っている。



「……ほんと、こういう人達って住む世界が違いますよね」



思わず呟く。川に流されるように生きてきた。みんなもやっているから、恋愛をして、部活をして、大学へ行き、バイトをして、就職をして。


みんながやってるから、みんなと同じように。

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