第34話 ◇夢◇

「そうなのです。瑠璃子さんのおかげです。」

「このコンペ、イタリアガラス工房研修がついていたのじゃないの?」

「そうです。」

「イタリア行くの?」

「そのつもりです。」

「どのくらい?」

「一年です。」

「なんで知らせてくれなかったの?」

「結果はここに来る直前に発表されたのですよ。お会いして伝えたかったのです。」

「作品は?持って来ていないの?」

 瑠璃子が尋ねると同時に、タクシーは今治タワーホテルに着いた。ロビーに入ると、黒いコートを身にまとった佳乃子が立っていた。木村は瑠璃子の問いには答えず前方を見て言った。

「中村さん来られていますね。」

「佳乃子さん近いから歩いてきたのかな?。」

「お迎えに行くと言ったのですけど、ボーイフレンドが送ってくれるからっておっしやってました。」

「ボーフレンド?」

 その時、瑠璃子と木村を見つけて佳乃子が駆け寄ってきた。

「久しぶりー。良かったわ。会えて。」

 再開の喜びを伝え合うと、三人はエレベーターで二十三階のスカイレストランへ向かった。

「佳乃子さん、ボーイフレンドに送って来て貰ったんだって?」

「そうなのよ。歩くと十分程だから、歩いて来ようと思ったのだけど、風邪気味で調子が良くないって言ったら。彼が送ってやるって言うのよ。」

「知らなかったわ。彼氏がいたのね。」

「最近よ。弟の友達なの。コロナ禍であまり出歩けなかったでしょ。ストレスたまってたから弟と一緒に飲みに行ったの。その時に来ていて、それで知り合ったの。彼もバツイチなのよ。懲りないわよね。二人とも。」

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アラ還の扉⓵瑠璃色 @kondourika

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