第31話◇コロナ禍◇

そんな状況なので、佳乃子とも会うのを控えていた。

「お久しぶりです。瑠璃子さんお元気ですか?」

 久しぶりの佳乃子の声に木村の顔がよぎった。

「お久しぶり。佳乃子さんも。」

「どうですか商売は?薬屋さんは儲かっていてますか?」

「いいえ。コロナで人が出てきません。」

「お薬屋さんも?うちもなの。巣ごもりで、気分転換にってお客さんも時々いるけど、まず接触がだめでしょ。ハンドアロマトリートメントなんてキャンセルだらけ。ホントに人が出て来ないよね。必要がない限り。」

「そうよね。それは、薬屋も同じ。木村さんもずいぶん来てないよねえ。」

 木村と東京で会ったことは佳乃子には伝えていなかった。

「そうなのよ。それで今回電話したのはね。九月三十日に緊急事態宣言がようやく解除になったでしょ。それでね。木村君が十月に今治に営業に来たいって言うのよ。アロマってクリスマスシーズンはかき入れ時なのよ。クリスマス用のアロマがセットで出たりして。おしゃれな容器にに入ってね。」

「そうなの?」

 瑠璃子は、瑠璃色の地球のアロマのウラスが頭に浮かんだ。あれからコンペはどうなったのか、木村から連絡がなかった。もしかしたら、その報告なのかもしれないと思った。そんな事を考えていると電話口で佳乃子の呼びかけが聞こえた。

「もしもーし。瑠璃子さん聞こえてる?」

「ごめんなさい。聞こえています。私は良いですよ。いつですか?」

「十月に入って三週目の週の水曜日はどうかしら。」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る