第28話◇年下の男の子◇
瑠璃子と木村は、再びビールジョッキを合わせた。運ばれてきたジャンクフードをつまみながら過ごす、一回りも若い木村との時間は楽しかった。
「このポテトすごいね。木村さんポテト好きだから。全部食べなさいよ。」
木村は、ビールとポテトが好きだった。今治で食事をする時も必ずポテトを注文した。
「このアロマボトルに名前を付けて下さい。」
「そうねえ。地球だからアース。面白くないわね。そのまま地球でも良いのじゃない。もしシリーズ化するなら、惑星の名前が良いかもね。」
木村は瑠璃子の瞳をしっとりとした眼差しで見つめると言った。
「瑠璃子。ってどうですか?」
瑠璃子は思わずビールを吹き出しそうになった。
「ええっ?私の名前?」
瑠璃子が聞き返すと木村が理由を言わずに答えた。
「いけませんか?」
「駄目よ。なんかアロマって感じじゃないわ。人の名前は。」
木村がこの世の終わりのような悲しそうな顔をしたので可哀想になって言った。
「瑠璃」は??瑠璃色の地球だからね。」
木村は、笑顔になって頷いた。
「瑠璃。」良いですね。シンプルでそれでいて深くて「瑠璃。」
何度も繰り返す木村を見ていて、恋愛感情というより可愛いと感じた。
「一等取れると良いね。」
「ええ。採用されないと、この地球は紙に描かれた絵のままの絵で終わるのです。是非ガラスでできた地球を瑠璃子さんに見て頂きたいのです。」
真剣な眼差しの木村に吸い込まれそうになって時を忘れていた瑠璃子だが、木村の後ろの壁に掛かっていた時計が目に入って我に返った。
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