第16話◇楽しい食事◇
「そうなのですけどね。一人だと食事を作る気がしなくて。沢田さんは息子さんいらっしゃるから良いですよね。食べてくれる人がいると張り切って作りますよね」
「息子は現場で働いているので、毎朝五時起きで弁当作っているのですよ。」
「すごい!」
瑠璃子と佳乃子がお互いの身の上話に花を咲かせていると、二人に酒を注ぎながら木村が言った。
「これ、ハモの梅肉和えですよね。僕好きなのです。あまり食べる機会ないのですけど。美味しいですよね。今治は、食べ物がおいしいですね。魚も野菜も。」
「東京もなんでも美味しいでしょ。都会なのだから。」
「そうですね。美味しい所は沢山ありますね。何しろ店の数が多いですから。東京へお越しの際は是非ご連絡下さい。ご案内しますよ。」
「それは良いね。木村君さんは、奥さんと二人暮らしなのよね。子供はいないから、美味しもの食べ放題よね。」
「いやーそんな事ないのですよ。僕は営業だから殆んど家にはいませんから。一緒に出掛けるのは。たまに帰った時ぐらいですよ。」
佳乃子の問いに木村が照れ臭そうに答えた。
佳乃子は瑠璃子より五つ年下の五十五歳。木村は四十八歳。既婚で子供はいないことが分かった。子供がいない為か若く見えるなと思った。七時過ぎから始まった食事は、アロマオイルや、株式会社「モリ―」の事、お互いの仕事の話など話題は尽きず、あっという間に二時間が過ぎた。もせの時計の針が午後九時を差した頃、佳乃子が言った。
「私、そろそろ帰らなきゃ。」
「誰か待っているとか?」
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